アンソロジー

『時の娘』ロマンティック時間SF傑作選

中村融さんのアンソロジー。すぐ購入したのだがちょっと遅れて読了。 ロマンティック時間SFっていうと梶尾真治「美亜へ贈る真珠」とか映画「タイムアフタータイム」とかの印象かなあ。確かにそういった甘酸っぱい青春ものの香りがする作品もあるが、技巧的だ…

『淑やかな悪夢』英米女流怪談集 倉阪鬼一郎・南條竹則・西崎憲 編訳

『怪奇礼讃』が面白かったので、手に取った。こちらは女性作家限定の怪奇幻想短篇集。全体としてはまあまあくらいかな。(気にったものに○)「追われる女」シンシア・アスキス 「先生、わたし不気味な男に追われている気がするんです」精神科医問診ものですな(…

『ヒー・イズ・レジェンド』 クリストファー・コンロン編

『運命のボタン』に引き続き、マシスンものを読む。こちらはトリビュート・アンソロジー。原書より収録短編が少ないらしいのは残念だが、話題性豊富な顔ぶれがずらり。(○が特に面白かったもの。<>内は元ネタとなったマシスンの作品)「スロットル」ジョー…

『怪奇礼讃』 中野善夫・吉村満美子編

19世紀末から20世紀前半にかけての怪奇小説アンソロジー。この手の本格怪奇小説アンソロジーはそれほど読んでいないが、雰囲気のある作品ばかりで非常に面白かった。短めの作品が多くて読み易いのも初心者に有難い。以下特に印象に残ったもの。「塔」マーガ…

『年刊SF傑作選 4』 ジュディス・メリル編

少しずつ読み続けている年刊SF傑作選(実は6までしか持ってないのだが)。今回はベスター、ライバー、ボーモント、カーシュ、コードウェイナー・スミスとくるので読む前からわくわく。(以下○が特に楽しめたもの)「新ファウスト・バニー」 ウィリアム・テン …

『年刊SF傑作選 3』 ジュディス・メリル編

3も読了。お馴染みの作家が増えてきた。(以下いつものように○が特に面白かったもの)「不安全金庫」○ジェラルド・カーシュ 主人公はある特定の条件のもとでとんでもない破壊力をもつという物質の製造に成功する。奇抜なアイディアとストーリー、さすがカーシ…

『年刊SF傑作選 2』 ジュディス・メリル編

さて、やはり面白かったので2も読了。あたりまえのことだが、年刊だから別にテーマがあるわけではないので、よくいえばバラエティに富んだ悪くいえば内容にバラつきのあるアンソロジーとなる。それでもすんなり読ませるのは、全体のレベルが高いせいか、編…

『年刊SF傑作選 1』 ジュディス・メリル編

年刊SF傑作選はいつか読むと思って買ってあった(6まで)。これまで積読していたが、speculative方面が盛り上がっているので、1巻目を読んだ(引き続き読んでいけるかというとそれは不透明で・・・)。SFを幅広く捉えるジュディス・メリルのこと、いわゆる普…

『筋肉男のハロウィーン〜13の恐怖とエロスの物語〜』 ミシェル・スラング編

さあのうずの実家も神奈川県なのだが、その近所には元々本屋が多くなかった。その昔中学から高校時代帰り道によく寄ったのは古くからある商店街にある(新刊の)本屋と古本屋だった。いずれも小さかった。古本屋の方はたぶん30年近く前からあった。品揃えは…

異形コレクション『オバケヤシキ』

中学・高校と学園祭でお化け屋敷をやっていた。 映画「キャリー」も「エクソシスト」も「オーメン」も怖くてみられない臆病者がちょっとしたきっかけで驚かす側になったのだから変なものだ。 担当は狼男(平井和正にはまっていたせいである)。暗闇の中で、や…

『千の脚を持つ男』 中村融編

The Monster Bookという英題もついている、中村融編の怪物アンソロジー。当然楽しくならないわけがない。あとがきも心なしかお気に入りの作品を並べて遊んでいる視点がいつもより強いように感じられる。解説でウェルズ「海からの襲撃者」やバーカー「父たち…

『英国短篇小説の愉しみ』3

1,2はまだ読んでいない。アンナ・カヴァンが読みたくなったので3を。○が面白かったもの。「輝く草地」○ アンナ・カヴァン 雑草も葉っぱもほっとくとどんどん出てくるよね!今の季節はとくにね!ってそれはともかく。草地を描いても独特の荒涼感が漂うと…

『エソルド座の怪人』異色作家短篇集世界篇

異色作家短篇集は‘奇妙な味’ともよばれるように料理にたとえられることがある。様々な国の個性豊かな香味風味の調味料による料理のイメージ。そうしたことから、異色作家短篇集の掉尾を飾るアンソロジー三集のさらにトリが世界篇であるのは偶然ではないだろ…

『棄ててきた女』 異色作家短篇集イギリス篇

アメリカ篇に比べると地味だなと思ったが、読んでいくうちに渋い味わいがこれまたなかなかに良く感じられるようになってきた。若島シェフの術中にはまったのかもしれない。あるいはオヤジ趣味がいよいよ強くなってきたのか(自分)。以下◎がおすすめ。「時間の…

『狼の一族』 アンソロジー/アメリカ篇(異色作家短篇集18)

異色作家短篇集まだまだ読み残しはあるけれど、若島印ということで、新アンソロジー第一弾に手を伸ばしてしまった。狼男アンソロジーかと一瞬思ったら違った。国別という区切りだった、そういえば。 元来移り気なので、一人の作家を徹底的に追いかけた記憶が…

『グラックの卵』 浅倉久志編訳

これは嬉しい♪肩の凝らないユーモアSFが並んでおり、楽しい。楽しいんでひとつひとつコメント。「見よ、かの巨鳥を!」 宇宙から巨鳥が飛んでくるというそのまんまの豪直球バカSF。 50年代なのに不思議と古く感じない。「ギャラハー・プラス」 酔った時だけ…

『影が行く』

記念碑的作品。このアンソロジーの高評価から翻訳SF短編出版が安定供給されるようになったと思っている。20世紀SF、奇想コレクション(など)へと続く中村融ブランドの確立ということも出来る。多くは1950年代以降の作品で占められ、モダン・ホラーSF集…

『フランケンシュタインの子供』

いくつか問題のあるアンソロジー。ひとつはシェリーの原典関連のものと映画関連のものが混在していること。もうひとつは、テーマに沿って集めて歴史的な流れを、というのは判るが結果的に古い作品と後の時代の普通のSFとで雰囲気に落差がありバランスを欠…

『マッド・サイエンティスト』

異常な科学者が巻き起こす不気味な物語、というアンソロジー。一部ちょっと違う感じの話もあるが。ちなみにすぐ下が原書の表紙。中々いい感じだけど、これじゃ日本では売れないかも(アメリカじゃどうなんだろ?)。印象に残ったのは、1960年の発表ながら昔の…

『地球の静止する日』SF映画原作傑作選

SF映画原作でレアなものを持ってくるという、まさに異色系短編集が売れている(らしい)今だからこその企画。映画は全て未見という不勉強さですが、小説のみでも十分楽しめる。最注目は珍品‘殺人ブルドーザー’。これほどまでに熱っぽくブルドーザーが描かれ…