ホラー

『銀の仮面』 ヒュー・ウォルポール

秀逸な恐怖小説集。1920−30年代の英国人気作家だが、基本的には心理劇側面が強く、一見超常的な事件が起こっても出来事の真相はその通りか判然としない(心理の反映のようにも読める)。そうした手法が時代を超えてストレートにこちらの背筋を寒くさせる。以下…

『死のロングウォーク』 スティーブン・キング

100人の少年のうち、1人だけが生き残るレース。ルールは簡単、歩き続けて時速4マイル以下になると警告1回、警告4回目で射殺されるというのだ・・・。何だかどこかの小説にそっくりな気もするが、こちらの方がずいぶん先。あまりにストレートに話が展開するの…

『影が行く』

記念碑的作品。このアンソロジーの高評価から翻訳SF短編出版が安定供給されるようになったと思っている。20世紀SF、奇想コレクション(など)へと続く中村融ブランドの確立ということも出来る。多くは1950年代以降の作品で占められ、モダン・ホラーSF集…

『フランケンシュタインの子供』

いくつか問題のあるアンソロジー。ひとつはシェリーの原典関連のものと映画関連のものが混在していること。もうひとつは、テーマに沿って集めて歴史的な流れを、というのは判るが結果的に古い作品と後の時代の普通のSFとで雰囲気に落差がありバランスを欠…

『マッド・サイエンティスト』

異常な科学者が巻き起こす不気味な物語、というアンソロジー。一部ちょっと違う感じの話もあるが。ちなみにすぐ下が原書の表紙。中々いい感じだけど、これじゃ日本では売れないかも(アメリカじゃどうなんだろ?)。印象に残ったのは、1960年の発表ながら昔の…

『蠅』 ジョルジュ・ランジュラン

やはりモーリス・ルヴェルと比較をしてしまう。皮肉なユーモアの感じか。エスプリだろうか。いやそもそもエスプリっていったい何。モレシャン、トルシェ、セイン・カミュ・・・ 閑話休題。基本的にはアイディア・ストーリーだし、ミステリ的な謎解きもあるん…

『パニックの手』 ジョナサン・キャロル

米国版の‘The Panic Hand’の半分とのこと(残りは『黒いカクテル』として刊行予定)。創元の紹介によると、ダーク・ファンタジイというのはこの人からきているらしい。どれもレベルが高い傑作短編集。買いである。集中一番長い風変わりなタイトルの中篇「おやお…

『ミッドナイト・ミートトレイン』血の本? クライブ・バーカー

基本的に気が弱いので、副題の‘真夜中の人肉列車’とか、巻頭の‘Everybody is a book of blood:Wherever we are opened,we are red.’とか見ると思わず身構えてしまうが、中身は意外に多彩なホラー短編集だった(もちろん血はいっぱい出てるけど)。表題作や、演…