日本文学

『土佐日記(全)』 紀貫之 西山秀人編

土佐日記(全) (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)著者 : 紀貫之角川学芸出版発売日 : 2007-08ブクログでレビューを見る» 古典。元々は京に住んでいた官吏が土佐の国司を勤め、任期を終えた後五十五日間かけて帰京する様子を侍女の視点から書いた日…

『偽原始人』 井上ひさし

偽原始人 (1976年)井上ひさし朝日新聞社発売日:1976-05-31ブクログでレビューを見る» 教育熱心な親に東大に行けるように願いをこめて名づけられた池田東大(とうしん)君は小学五年生。家庭教師に学習塾に大忙しだが、勉強が大嫌いな彼は持ち前の機転と仲良し…

『桜田門外ノ変』下巻 吉村昭

桜田門外ノ変〈下〉 (新潮文庫)吉村昭新潮社発売日:1995-03ブクログでレビューを見る»下巻は非常に重苦しかった。早々に井伊直弼暗殺の大願を成し遂げると、後はひたすら主人公関鉄之助が逃げ延びるがじわじわ追い詰められる話。丁寧で正確な描写がさらにの…

『桜田門外ノ変』上巻 吉村昭

桜田門外ノ変〈上〉 (新潮文庫)吉村昭新潮社発売日:1995-03ブクログでレビューを見る» 今年の大河ドラマは幕末を扱っているが、全く史実に明るくないことに気づき、またこれまで高名な著者の本を読んだことが無かったのでこの本から読んでみた。幕藩体制に…

『暗渠の宿』 西村賢太

暗渠の宿 (新潮文庫)西村賢太新潮社発売日:2010-01-28ブクログでレビューを見る»例によって藤澤清造全集出版を目指す‘ぼく(貫太)’の短篇(私小説以外のものは無いのかな?)。さすがに安定した面白さ。「けがれなき酒のへど」 デビュー作。既に作者のスタイル…

双調平家物語〈12〉治承の巻? 橋本治

双調平家物語〈12〉治承の巻1 (中公文庫)橋本 治中央公論新社発売日:2010-03ブクログでレビューを見る» 生真面目な重盛に潜む出世欲を見抜き王朝人事という伏魔殿へ誘う兼実とか鹿ヶ谷の謀議に気づき激昂する清盛とか見せ場もあるけど、全体に謀略や嫉妬な…

双調平家物語〈11〉平家の巻(承前)  橋本治

双調平家物語〈11〉平家の巻(承前) (中公文庫)橋本 治中央公論新社発売日:2010-02ブクログでレビューを見る» 源氏を退けた平氏は、藤原一族など貴族が衰退し天皇家も政治に主体的に関わる人物が出ない中で次第に権力の中枢に入っていく。しかし肝心の家長清…

『双調平家物語10 平治の巻? 平家の巻』 橋本治

双調平家物語〈10〉平治の巻2 平家の巻 (中公文庫)橋本 治中央公論新社発売日:2010-01ブクログでレビューを見る» 保元の乱の後権力を手中にした信西が反発を買い討伐され、今度は後白河法皇に寵愛により地位を得た凡庸な男信頼が権勢を誇るようになる。その…

『双調平家物語9 平治の巻(承前)』 橋本治

双調平家物語 (9)橋本 治中央公論新社発売日:2002-08ブクログでレビューを見る» 今年の大河ドラマは‘平清盛’で、武士らしい直情的な人物として描くという新機軸でなかなか面白く珍しく続けて観ている。ということで、中断していた本作の続きを10年ぶりに読…

『平家物語』(ビギナーズ・クラシックス 日本の古典)

平家物語 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)角川書店発売日:2001-09ブクログでレビューを見る» 大河ドラマ「平清盛」がなかなか面白いので長らく中断していた「双調平家物語」を再開しようと考えていたが、原典の方も気になったのでとりあえず初…

『道化師の蝶』 円城塔

道化師の蝶円城 塔講談社発売日:2012-01-27ブクログでレビューを見る» 第146回芥川賞を受賞。円城塔は主にSF畑を中心に活動を開始し、トークショーやイベントでもたびたび見かけている方だけになぜか自分のことのように嬉しくなってしまった(いつも礼儀正し…

『季節の記憶』 保坂和志

季節の記憶 (中公文庫)保坂 和志中央公論新社発売日:1999-09ブクログでレビューを見る» 鎌倉を舞台に5歳の息子を持つ作家の日常を描いた作品。穏やかな日常と息子や周りの人々の交流の中でゆっくり時は移ろい・・・ということで谷崎潤一郎賞を取ったりして…

『きことわ』 朝吹真理子

きことわ朝吹 真理子新潮社発売日:2011-01-26ブクログでレビューを見る» さて芥川賞が話題になっているので、以前受賞の時に読みそびれた本書を思い出し読んでみた。好きな要素がちりばめられているので心地よく読むことが出来た。1980年代に仲良しだった年…

青木淳悟「鎌倉へのカーブ」

ふと仕事帰りに寄った本屋でタイトルが気になり、文藝11月号を購入(はじめてかも)。東京から鎌倉の横須賀線での帰り道にふさわしい超本格(?)<神奈川小説>だった! いろいろなところで仕事をする夫婦が鎌倉など神奈川を中心に生活にあった住みやすい場所を…

『鎌倉夫人』 立原正秋

鎌倉夫人 (角川文庫 緑 298-20)立原 正秋角川書店発売日:1981-05ブクログでレビューを見る» 古書市で見かけた本。この人の作品ははじめて読む。 父がやっていた鎌倉の医院を守るため、いとこのプロポーズを断って医者と結婚した主人公。しかし夫は、父が晩…

『赤目四十八瀧心中未遂 』車谷長吉

赤目四十八瀧心中未遂車谷 長吉文藝春秋発売日:2001-02ブクログでレビューを見る»おすすめに従い、また破滅型私小説。訳ありで尼崎にやってきた中年男。牛や豚の臓物をさばく仕事をアパートで行なう。そのアパートには美しい女がいたが・・・。解説にもある…

『どうで死ぬ身の一踊り』西村賢太

どうで死ぬ身の一踊り (講談社文庫)西村 賢太講談社発売日:2009-01-15ブクログでレビューを見る»もうすっかり話題の人となった著者。初めて読んだ。大正時代に極貧生活の中で野垂れ死んだ無頼作家藤澤芿造。主人公はその生き方に共感を覚え、狂おしいばかり…

『ひかりごけ』武田泰淳

ひかりごけ (新潮文庫)武田 泰淳新潮社発売日:1992-04ブクログでレビューを見る»知り合いにすすめられたので読んでみた。どれも重い題材を扱っている感じだが、小説としてはなかなか面白い。「流人島にて」少女を連れてH島に向かう主人公にはある目的があっ…

『他人の顔』 安部公房

先日クラシック番組でやっていた映画「他人の顔」のテーマ曲がすごくよかったので、原作を手にしてみた。安部公房の小説はシュール・幻想系のものが多いから、以前から興味はあったが、これはあんまり面白くなかった(笑)。 実験中の爆発で顔に大きな損傷を…

『田園の憂鬱』 佐藤春夫

名のみ知っていた佐藤春夫を読んでみた(有名なのは「小田原事件」でしょうか)。 都会を嫌って田舎のあばら家に住むことになった若い主人公(芸術家?)とその妻。美しい風景に心を奪われる主人公であったが、犬を飼う習慣のないその村の酔っぱらいに愛犬を…

『機械・春は馬車に乗って』 横光利一

気まぐれに古本市で見つけて読んだが結構面白かった。どの作品も青空文庫で読めるみたいだけどまあ100円だったからいいか。「御身」 姉に生まれた娘が可愛くて仕方がない弟。それなのに懐かないという話。あんまりウェットな感じが無い文章が読み易く、結構…

『倉橋由美子の怪奇掌篇』

古本市で購入したんだっけかなあ。夏用のホラーとして準備したのだが、読了したらもうすっかり秋でした。倉橋由美子ははじめて。タイトル通りまあ怪奇趣味なんだけど生々しさよりもシュールでコミカルでエロティックでひんやりとクールなタッチが特徴で不思…

『猫を抱いて象と泳ぐ』 小川洋子

寡黙な少年は、使われなくなったバスで生活する<マスター>から教わったチェスに魅せられるようになる。やがて優れたチェス・プレイヤーに成長した少年だが盤の下にもぐりこまないと実力を発揮できないスタイルのため、チェス倶楽部の正式な会員になること…

『細雪』 谷崎潤一郎

で、京都・神戸紀行とからめて気まぐれに古典に挑戦というわけで『細雪』を読了。映画やドラマで知られている作品であり一方作者も超高名なので、特に意識はしていなかったものの漠然と内容にイメージがあった。印象に残った点。・よく女優が4人並んでいる写…

春の鎌倉文学散歩

昨日の大雨から一転快晴となったので、散歩へ出かけた。今日は鎌倉文学館の企画展<田村隆一〜詩人の航海日誌〜>を見てきた。 全然関係ないけど散歩中に家の軒下のツバメの巣を発見。ひなも結構成長して大きい。 散歩するとつい寄ってしまう御霊神社。さす…

『鈴木いづみコレクション7 いづみの映画私史』

若い頃にとてつもなく刺激を受けた作家を読み返すのは勇気がいる。ましてやエッセイではなおさらだ。小説ならばちょっと古臭い意見があっても、本人の計算だとか考えることも出来るし、だいたい小説であれば直接的なディスカッションそのものが登場する機会…

おお!メッタ斬りの芥川直木賞レース予想が

なんと今回は当たったではないか! 当たってしまうとボヤキ芸がみられないのがかえって残念だったりして。 今回は華のあるご両人だから話題性十分だな。とりあえず読まなきゃ。(ああ読まなきゃ本が次々と・・・)

『ミノタウロス』 佐藤亜紀

いやあ面白いね、これ。評判通りの傑作。 20世紀初頭、ロシア革命前夜のウクライナ、架空の村ミハイロフカで話は始まる。主人公はひょんなきっかけで地主となった男の息子。生来のならずものである彼は、時代のうねりとともにやがて野に放たれ、略奪と殺戮…

恒例のメッタ斬り芥川、直木賞レース予想

お!恒例のメッタ斬りレース予想がアップされたよ! 相変わらず候補の小説そのものは読んでいないんだけど、予想屋の話は楽しんじゃうんだよね。さて今回はいかなる結果に。