日本SF

怪奇探偵小説傑作選5海野十三集 三人の双生児

さて海野十三を遅ればせながら今回初めて読んでみた。少年向けのものやスパイもの戦争ものなど多くの作品があるのでこの一冊だけで何かをいうのもなんだが、科学的なアイディアを中心にすえた時に乱歩に似た官能的猟奇的なSFミステリを集めたこの短編集は初…

『老ヴォールの惑星』 小川一水

たまには日本の現代SFを読んでみようと思って、手にした。とはいえもう3年前に既に出ているし名の通った本だがそこはご容赦頂いて。期待以上の面白さだった。基本的にはクラークの流れを汲んだ最近ではむしろ貴重なポジティヴな宇宙科学SFといえる(2006年版S…

「はるかな響き Ein leiser Tone」 飛浩隆

6人の作家による短編、エッセイが随時ウェブマガジンで配信されるというTORNADE BASE話題の企画‘answer songs〜作家と科学者の対話が生んだ短編’の配信が始まったことをThornさんのところで知る。第一弾は飛浩隆!配信期間が決まってるというので直ぐ読んだ…

『Boy's Surface』 円城塔

読み終えてなんかいいたいんだけれどもいうことがない。 短編集なのだが、それぞれの短編が何の話だかよく分からないのである。それでも表題作は盲目(盲視?)の天才数学者の恋愛物語という筋という枠が感じられるが。 人を落ち着かなくさせる小説である。基…

『虐殺器官』 伊藤計劃

傑作だった。 サラエボでの核テロを契機に先進諸国で厳格な管理体制がしかれた近未来が舞台。主人公シェパード大尉が、内戦や虐殺が絶えない後進諸国で暗躍する謎の男ジョン・ポールを追う、という話。基本的にシンプルな筋に、しっかりと大ネタのSFアイディ…

『Self-Reference ENGINE』 円城塔

話題の本なので手を出した。意外と流行りものも気になるのであった。 フクザツなことは分からないので、結局のところ大層よく分からない話ではあった。 しかし楽しめなかったということはなく、ひんやりとした冷たい笑いの漂う奇想小説といった楽しみ方もで…

『ラギッド・ガール』 飛浩隆

待望の《廃園の天使》シリーズですよ! 予定では『空の園丁(仮)』が先だったような気もするが、本短編集が登場した。今回は〈数値海岸〉の成り立ちや〈大途絶〉の経緯が明らかになる。 実に周到な設定のシリーズである。仮想空間の話だから、基本的に何でも…