『壊色』 町田康 と ひでお

 町田康ははじめて読む。友人からもらったのだがいったいどんな人間と思われているのか。それはともかくも散文のような詩のようなミュージシャンらしいリズム感のある文章が並ぶ。無理やり分けるとすれば第一章と第二章はエッセイ、第三章は日記、第四章は・・・何だろ一種の替え歌?
第一章の「納得」がいい。インプロビゼ−ションについての話、といえるかもしらないが、〈納得演奏〉はテクニックがあると失なわれるという指摘がおかしい。ところどころ昔の小説のような言葉遣いに感じられるところが不思議。それにしても第四章の「唱歌注解」には爆笑。まあ説明しようとすると冗談を解説するような味気なさに襲われるが、童謡の歌詞そのものに無理やり当て字をして別の詩に変えてしまうというもの。苦しいものばかりなのだが不思議と楽しい。いやいや実は超絶技巧なのか?とにかくよくやる。日記というのも相当いい加減。果たしてこれか?『うつうつひでお日記』の「町田康のウソばかりの日記」の指すものは(実際は乙一の日記のところで間接的に言及されている)。


 ところで『うつうつひでお日記』の方は専門の書評家ではない人の一種の書評集として、大変興味深い。思えば『定本不条理日記』も一種のSF批評漫画だったし、もともと作風のひとつともいえるか。ともかく『失踪日記』の単なる続編ではないので、漫画好きではない書評好きもお見逃しなく。