『黎明の王 白昼の女王』 イアン・マクドナルド

 イアン・マクドナルド(プログレじゃない方)の長編ファンタジー異世界とつながる能力を持ってしまった一族(女系)の物語とでもいいましょうか。
 時代を変えての三部構成(形式的には四部だが、短い第三部は第二部の続き)で、様々な手記で語られる第一部、語呂合わせや文体の凝った第二部、一種SF的(といえなくもない)アイディアの提示あり和風剣術風味ありの第四部と多芸ぶりが目立つ。アイリッシュ系ファンタジーはほとんど読んだことがないので次々に登場する慣れないイメージに筋を見失いかけたが、飽きさせないサーヴィスぶりで最後まで読めた。基本的には中々エグイ話で、普通に言えば読みやすいといい難いし(第一部だけだと読みやすい傑作といえるかもしれないが)、ところどころ実際のアイルランドが反映されるなどやや癖の強い一編と思うが、「現実をダビングすること−究極のリミックス」という意気込みが伊達ではない力作である。
 それにしても最近は以前の積読分の消化が多く、旧作ばかりになってしまってるなあ。