『ジャクリーン・エス』血の本? クライヴ・バーカー

 物凄く好きというわけではないが、何となく気になるクライヴ・バーカー〈血の本〉2冊目(本当はスプラッターものは映画をはじめやや守備範囲外なのである)。これも時々顔を覗かせるナンセンスすれすれの歪んだユーモアに満ちた視覚的イメージとスプラッターを基調としながら変化に富む作品群で『ミッドナイト・ミートトレイン』同様結構いける。

「腐肉の晩餐」 謎めいた友人クウェードに惹きつけられる大学生スティーヴ。ある時クウェードは夏休みに行った“ちょっとした実験”について語り始めるが・・・。スティーヴの恐怖の一部に個人的に既視感がある。著者にも体験があったのだろうか。
「地獄の競技会」 “その青く晴れわたった日、地獄はロンドンにやって来たのである”ある神話がモチーフ。『死のロングウォーク』をどうしても思い出す。
「ジャクリーン・エス」 他人の命をむごたらしく奪う能力を持つジャクリーンの愛憎あふれる物語。ラストのシーンのグロテスクさと奇妙さの入り混じり具合がこの人の個性のような気がしている。

「父たちの皮膚」 DVもののフォーマットがうまく組み込まれた怪物もの。後半の予想を越える話のエスカレーションも古典的ホラーとの風味の違いを感じる。
「新・モルグ街の殺人」 オーギュスト・デュパンの甥を主人公とした、他作とやや毛色の異なる古典的怪奇探偵小説。こんなのも書くんだな。