ワールドコン極私的まとめ その3

 個人で参加しているので特に夜遅くまで宴会をしたというわけでもないのに、早くも疲労ぎみの大会4日目(自分には3日目)の9/2日曜日であった(オヤヂ化進行悲し)。で考えたが、やはりワールドコンを味わおうということで、‘ゲスト・オブ・オナー デイヴィッド・ブリン’をみることにする。読んだことないけど。こういう企画は大会全体を通じてのメッセージを提出するような場になるのかな。様々な文化の特性を維持しつつ、世界が協力をしていくのが望ましいという前向きなメッセージであった。<違うこと>をSFファンは受け入れやすいでしょ!というような話も出てきた。で、ちょっと聞きながら休みながら時間を過ごし、‘幻想と怪奇’へ。このタイトルで来られると行かないとね。予定の顔ぶれと変わり、浅暮三文田中啓文、マッシモ・ソマレ、井上雅彦山之口洋(敬称略)。井上雅彦さんの佇まいはやはり素晴らしいと思いました。基本的にはマッシモ・ソマレさんのイタリア幻想文学事情。ソマレさん(で、いいのかな?)のことは不勉強ながら初めて知ったが、大変貴重な人材である。日本語が堪能でよく日本のSF系文化を知っているイタリアの方、これだけの人はどうだろうあまりおられないのではないか。イタリアを中心とした(西)ヨーロッパ幻想+SF文学レア情報満載で見逃した好事家の方もったいないことをしましたよ!さてニューウェーブ企画同様に話が多岐に渡ったので、印象的な発言と、イタリアなどヨーロッパ幻想文学事情(ソマレさん発)を分けて羅列します。(イタリア作家の名前は間違っているかもしれませんし、メモも走り書きなので内容もまあ参考程度でヨロシク)

山之口「自分は日本で唯一のファンタジー専業作家」
     「中国の雑誌にはSFの『科幻世界』とファンタジーの『奇幻世界』がある。この科幻と奇幻という分類は自分の考え方に近い。ファンタジーがベースにあり、SFを書くときは科学を手段にするという感じ」
     「日本ではファンタジーというジャンルはまだ出来ていないと考えている」

井上  ソマレさんの日本作家短編集が結構受けている(数百部程度出た)ことを受け
「世界を相手にするとき、日本的なものを使って小説を書こうと日本作家はしてしまうが、むしろ海外のものを使う時に逆に日本らしさが出ることもある」

ファンタスティック映画祭のようなジャンルレスの感覚が自分には合っていて、ファンタスティック作家と自称していたこともある」
高野史緒(会場から)「ロシアではもう少し高級なジャンルとしてファンタスティカという呼称があり、大変いいネーミングと思う」

ヨーロッパ出版事情

○イタリア
     ・専業作家はほとんどいない!出版業界の規模が非常に小さいから。
     ・タレント本なら売れることもある(200万部くらい)
     ・兼業で一年に一作ぐらい書いていくというスタンス。日本の作家の出筆量には驚くだろう。

・映画、コミック、小説のジャンル分けがかなりはっきりしていてメディアミックスなど全く期待できない。

・イタリア人は政治好きなので、出版社も右翼色の強いところと左翼色の強いところがある。SFは左翼扱いなので、右翼系出版社に敬遠されることもある。ファンタジーはどちらかというと右翼。

・政治好きなので作家にも派閥がある。でも個人主義なので一匹狼の集まりである(どうゆう感じなのかイメージしにくいなあ)

・大学教授などが書いたものが評価されやすい面もある。

・ファンタジーは剣と魔法のような形式が保たれたものがやはり売れる。そうしたフォーマットを出版する側が指定する傾向もある。
    ・小説にセックス描写は出てこない。そうしたものを読者は期待していないのではないか。過激な表現は海外作家なら認められても、自国の作家では許されない面がある。
    ・様々な作家

ダニロ・アローナ・・・イタリアの平山夢明。映画評論もするらしい。イタリアにはあまり都市伝説はないが、伝承話を集めているらしい。

リチア・トロイージ・・・若い女性の物理学者(萌えですかそうですか)。作品はライトノベル的ファンタジー

ヴィットーリオ・カターニ・・・ベテラン本格SF作家。小松左京マガジンに質疑応答形式で対話が載るらしい。

アレッサンドロ・デフィーリッピ・・・精神科医ゴスロリ(!)な作品を書くそうだ。

マッシモ・チーティ・・・ハードSF作家。カルヴィーノっぽい物も書く。

ヴァレリオ・エヴァンジェリスティ・・・ウンベルト・エーコみたいな感じ。ニコラス・エメリコを題材にしたものがある。

○スペイン

    ・フランコ政権時代に左翼的と考えられていたSFは弾圧。政権崩壊以降SFブームが起きた。

    ・スペイン語圏の国は多く、ある程度需要があるため、翻訳には不熱心。

○フランス

    ・ハードSFは人気がない。

    ・SFと名前がつくと売れないのでミステリと融合させたりしなくてはいけない。最近流行っているのはファンタスリラー(ファンタジー+スリラー)。(どこかで聞いたような話である)

意外に長くなったので、この後みた‘テッド・チャン インタビュー’‘テスラーガーンズバック連続体’はまた次回に。