DVD‘マタンゴ’

 キノコ!キノコ!キノコ!

 チャタンゴじゃないよ<ああよくそんな脱力だじゃれを
 名高い特撮ものの古典である。10代20代のころはこういう古い特撮ものにもう一つ食指がわかず、ウルトラ系も現役少年時代にみたもの以外は大してみていない(‘スタートレック’と同様である)。今の若い人たちが80年代ぐらいのSF映画をみたらどう思うのだろうとか考えたり。不勉強なので有名な本作品が円谷英二によるものと初めて知った。
 7人の仲間は、ヨットでクルージングへ。突然の嵐に襲われ、南海のじめじめした孤島に漂着。水と食料を探して島をさまよい、人影のない難破船を発見する。国籍不明のその船には<マタンゴ>という名の記録されたキノコがあり、どうやらそれが乗組員の失踪と大きく関わっているようなのだ。危険なキノコ<マタンゴ>、しかし食糧不足のなか美味そうな<マタンゴ>に誘惑される者もあらわれる・・・。
 名作です。あのホラーSFの古典『異次元を覗く家』ウィリアム・H・ホジスンの「闇の声」を原案として福島正実が原作を書いたらしい。おどろおどろしい雰囲気のなか、不安のなかさまざまな人間のダークな部分が描かれるところが何より凄い。話自体が非常によく出来ているのでひと時もダレ場がない。もちろん緊迫感を演出するのに特殊効果が大きくはたらいているのも見逃せない。冒頭の船のシーンも当時最先端の技術が使われていることで確かになかなかよく出来ているし、とりわけ難破船のセットが素晴らしい。古びた幽霊船のイメージで、その中はキノコの胞子が散乱していて雰囲気が非常によく出ている。もちろんキノコおよびキノコ人間の特殊効果も見事である。蛇足だが、キノコものということでトリップ感の強い映像を予想したが、あまりそうではなかった(キノコの色合いはサイケデリックかも)。
 水野久美の妖艶なメーク、顔の見えない名(?)演技天本英世(キノコ人間役)もみどころ。