『グランダンの怪奇事件簿』 シーバリー・クイン

 怪奇探偵物はおそらくその筋の人が列挙すればいくらでも出てくるのだろうが、それほど詳しくないので、津原泰水の『蘆屋家の崩壊』が真っ先に思い浮かんでしまうぐらいだ(アレは面白かった!)。さてさて1920〜30年代の‘ウィアード・テールズ’で書かれていた本書のジュール・ド・グランダンのシリーズ。気取ったフランス人探偵の大仰な台詞回しが作品の雰囲気にマッチしていてなかなか楽しい。どんな化け物が出てくるか、といったパターンが決まってしまっているので、物語の大枠はやや固定されているが、アイディアや謎解きはそれなりに変化に富んでいるので飽きさせない。奇妙な夫婦の正体は・・・「ウバスティの子供たち」、偏屈な男の最期の言葉の秘密「ウォーバーグ・タンタヴァルの悪戯」、連続猟奇殺人事件の真相「銀の伯爵夫人」が楽しめた。