『細雪』 谷崎潤一郎

 で、京都・神戸紀行とからめて気まぐれに古典に挑戦というわけで『細雪』を読了。映画やドラマで知られている作品であり一方作者も超高名なので、特に意識はしていなかったものの漠然と内容にイメージがあった。印象に残った点。

・よく女優が4人並んでいる写真をみた記憶があるので、4姉妹の話とは知っていたが、実際は長女の影は薄い。家に縛られている可哀想だが目立たない役回りで、全体としては他の3人の話。
・耽美的な面は乏しい。だから代表作として挙げられやすいのかな
・話は奔放な四女の割を食って婚期を逃しそうになっている三女(婚期とか妹のせいで割を食うとかそんな時代背景なのです若い人たちよ)が何度も見合いをするという、見方によっては大層地味な話である。でも読んでいる間は退屈することはなく、その辺は素晴らしい。
関東大震災後、関西に移った谷崎自身は元々東京人である。関西の言葉や文化を題材にして、成功を収めるのだからそのリサーチ力と表現力はさすが文豪である(関西文化の表現について大阪出身の田辺聖子が褒めてるのだから、成功といっていいのだろう)。

いわゆる耽美的な意匠だとか派手な部分はそれほどないが、小説としてリーダービリティが高い上に、昭和10年代の風俗・文化・災害・世界情勢などが無理なくストーリーに溶け込んでいるのだから、名作の中でも相当耐用年数の永いものとなるだろう。