映画‘ウォッチメン’

 アメコミは全くの門外漢で原作も読んでいない状態であるが、盛り上がっているようなので性懲りもなくほとんど好奇心で先日みてきた。というと少し嘘があって、コミックの『ウォッチメン』を柳下毅一郎さんが高く評価をしていたことは知っていたので、映画化と再刊は手をつけるのにいい機会だと思ったこともある。あとアメコミ関連の‘ダークナイト’がなかなか刺激的だったというのもある。
 で、まずはいろいろな意味で興味深い映画で、楽しめた。ちなみにこれからみる方は主要登場人物のヒーローたちの紹介は知っておいた方がみやすいでしょう(映画秘宝やネット上にあります)。原作の方はヒーローものの約束事を打ち破る画期的な作品らしいが、映画の方でまずユニークなのはオープニングでヒーロー集団に歴史があることが示されているところである。コスチュームやメンバーが時代とともに変わり、そこに様々な混み入った人間模様が生まれてくるというのは面白い。また事前に知っていたバイオレントな描写の数々もそうしたエピソードに巧みに盛り込まれているのでそれほどこれみよがしな印象はなく、ストーリーのへヴィさを強めている。登場人物の中ではあっけらかんと暴力を重ねるエゴイスト<コメディアン>、そしてはけ口のないフラストレーションを抱えたオブセッションの塊<ロールシャッハ>(ファッションは古典的なハードボイルドのスタイルというのもいい)は特にインパクトがある。この辺はバットマンたった一人で(ジョーカーと二人?いやもう少しいたか)で物語を支えている‘ダークナイト’より重層的である。しかし根本的にのめり込めない部分があって、なぜヒーローものにリアルさを追及するのかということがどうにもわからない。例えば、絶対的に非日常的な力を持つDr.マンハッタンは青い体で火星にまで行ってしまうので、絵空事の側面が強調されてしまい、他の主人公のドラマがリアルだとしても存在が浮いてしまってみえるのだ。その点では、バットマンの能力的・肉体的限界を強調し続けた‘ダークナイト’の方が無理がなかった気もする。それからもう一点いいたいことがあって、選曲のセンスがどうもね。ボブ・ディランやジミヘンの有名どころを使うのはともかくとしてネーナにはずっこけたよ。
 さて、以上は原作未読状態での感想である。とにもかくにも原作に非常に興味がわいたので、さっそく購入した。次回は原作の感想を書く予定。