『田園の憂鬱』 佐藤春夫

 名のみ知っていた佐藤春夫を読んでみた(有名なのは「小田原事件」でしょうか)。
 都会を嫌って田舎のあばら家に住むことになった若い主人公(芸術家?)とその妻。美しい風景に心を奪われる主人公であったが、犬を飼う習慣のないその村の酔っぱらいに愛犬を殺してやると脅されたことをきっかけに、次第に正気を失い、幻聴や幻覚に悩まされる。
 ポーの言及もあり怪奇幻想風味も強い。短いこともあって、すいすい読めるし、娯楽小説読みでもイケる感じ。「犇(ひし)めく」、とか「簇(むらが)って」とかの漢字も勉強になります。結末はいきなりきてしまうが、何だったら狂気の果てに妻を×××して、◆◆◆したりしたらもっと面白かったのになあ。<ないものねだりです