映画‘第9地区’

 ツイッターの皆さんのおすすめに従い、時間をつくって観に行った。エイリアンものの新境地を開く傑作。新人監督ならではの野心的な試みがみられ、映像・ストーリー共に新鮮。これは観ておいてよかった。以下紹介と感想だが、出来るだけインプットが少ない方が楽しめると思うので、あまり細かく内容に触れてはいないがなるべく観てから読んでください。


 南アフリカヨハネスブルグ上空に突如宇宙船が現れた。船内のエビに似た宇宙人たちは弱っており、第9地区と呼ばれる地域に難民として暮らすことになる。やがて第9地区はスラム化し、宇宙人排斥運動が抑えきれないようになり、超国家機関MNUは宇宙人たちをヨハネスブルグ郊外への移住を図るが。

 難民としての宇宙人ということでシリアスな話を予想していたのだが、本筋は堂々たるエンターテインメントでオーソドックスといえる部分もある。でも、ところどころに皮肉が効いていて、特に後半の展開は予想をいい意味で裏切ってくれる。ギリギリのところで無理過ぎる展開にはなってはいなくて、破天荒だけど破綻はしていないといった感じ。決してヒーローとはいえない主人公の行動についても伏線が巧くはられていると思う。ドキュメンタリー風の映像は‘トゥモロー・ワールド’を連想したが、世界観としてはより混沌としている。また、公開時期もあって植民地SF映画としてどうしても‘アバター’と比べたくなるが、あちらが幅広い支持層を得るために描くのを避けてしまった空白の部分をキツいユーモアで埋め尽くしてしまったような印象もあって、意図してはいないのだろうが挑発的な内容になっている。もちろん個人的にはこちらを支持したい。
 グロテスクな映像、破天荒な話の転がり具合など全体としてはやはりB級っぽさがぷんぷん漂う(そこがよさでもあるけど)一方で、これが映画デビューとなるニール・ブロムカンプ監督がヨハネスブルグ出身であることを考えると、なかなかに意味深な作品だとも思う。