『ヒー・イズ・レジェンド』 クリストファー・コンロン編

 『運命のボタン』に引き続き、マシスンものを読む。こちらはトリビュート・アンソロジー。原書より収録短編が少ないらしいのは残念だが、話題性豊富な顔ぶれがずらり。(○が特に面白かったもの。<>内は元ネタとなったマシスンの作品)

「スロットル」ジョー・ヒルスティーブン・キング<激突!>○ 仲間がヤバいことをやらかしちまったバイク軍団。中心のベテラン二人は自体の収拾に頭をめぐらせるが、血気盛んな若い衆はそうはいかない。そんな中暴走トラックに襲われて。アクションに富んだ作品でノリがよく、さすがリーダビリティが高い。バイカーものだが同時に父子物であるサーヴィス精神には脱帽だ。
「リコール」F・ポール・ウィルソン<種をまく男> 密かに隣人の生活を混乱に陥れるシオドアの物語。いつものように用意周到に罠を仕掛ける彼だが今回は何故か邪魔が入る。うーん普通かなと思ったらcocoさんのつぶやきによるとウィルソン自身の作品との関連があるらしい。そうかあそうなるとちゃんとした評価は下せないなあ。
「伝説の誕生」ミック・ギャリス<アイ・アム・レジェンド> かの伝説の男の誕生の影には何があったのか、周囲の人物から描かれる。と、いっても読んでいないのであんまり楽しめなかったなあ。
OK牧場の真実」ジョン・シャーリー<ある日どこかで>○ 失った妻を取り戻したい主人公は、その発端を開拓時代の西部に求めた。特殊な方法で時代を遡る方法を知り、原因を取り除くべく行動を起こすが。元作品を読んではいないが、直接関係があるわけではないので問題ない作品。むしろOK牧場の決闘をよく知らないことの方が問題か(>自分)。いずれにしても切ないタイムトラヴェルもので、楽しめた。当然ながらロックネタも出てくる(著者はロック・アーティストでもある、知らない方のため為念)。
「ルイーズ・ケアリーの日記」トマス・F・モンテルオーニ<縮みゆく人間> 縮みゆく彼を妻はどう感じていたのか。これも元を読んでいないからなあ・・・。ありゃあ訳書は入手困難ですか。
「ヴェンチュリ」リチャード・クリスチャン・マシスン<陰謀者の群れ> 精神科医に自らの症状を訴える主人公。薬は効果を示さず、火災の妄想に襲われる。ミドルネームだけ違う息子の作品(父親はリチャード・バートン・マシスンが正式な名らしい)。作品はたぶん初めて読むかな。息子の方も作家やTVの脚本家・プロデューサーとして活躍しているようだ。
「追われた獲物」ジョー・R・ランズデール<狙われた獲物>○ 売れっ子作家だった主人公は仕事はスランプだは離婚の危機にあるはでくさくさしていた。そんなある日馴染みの骨董屋で奇妙な人形をすすめられる。人形ホラー。以前AXNでやっていた‘スティーブン・キング 8つの悪夢(ナイトメアズ) ’の「バトルグラウンド」を思い浮かべた(全然関係ないが、その中ではウィリアム・H・メイシーがいい味出してた「アムニー最後の事件」がよかったな。8編全部は観ていないのだが)。
「地獄の家にもう一度」ナンシー・A・コリンズ<地獄の家>○ あの忌まわしいベラスコ・ハウスの唯一の生還者ベンジャミン・フィッシャーが、かの家に最初に訪れた時に襲われた恐ろしい出来事とは。とかいって映画も含めて原典にまだ当たってないんだけど、なにこれ怖ええええええ!!!いやーこんなに怖い小説久々に読んだなー。いやマジ夢に見そうだわ誰か助けてくれえ!

 一番はやっぱりナンシー・A・コリンズかな。他、原典に当たってなくても楽しめるものもあるが、基本的には十分にマシスンを読んでいる人の方がより楽しめるかな。反省して(笑)読後にマシスンの本を2冊ほどポチっと。まあ話題性十分の顔ぶれだからマシスンの名を知らしめるのには一役買ってくれそう。