『ペット・セマタリー』 スティーヴン・キング

 妻と幼い子ども二人と共にとある田舎町へ引っ越し、再出発をしようとするルイス・クリード。慣れない土地に不安を感じていたが、ほどなく気のいいジャドという老人と親しくなる。そんなジャドの土地案内の中に、墓標が同心円状に並べられた奇妙なペットの共同墓地があった。

 ペットがぞろぞろ甦って大パニック!みたいな話を想定していたが全然違うのね。これは家族の物語である。スリルとサスペンスが本格的に高まってくるのは実は最後の4分の1ぐらい。それまでの4分の3はホラーっぽい要素がないわけではないが、比較的日常的な家族の話が中心である。違うものを予想していた身として前半部は退屈はしなかったものの多少地味な気がしたが、そこでの伏線がクライマックスに効いてくるんだなあ。なるほどー。ちょこっとばらしてしまうと、「恐ろしさ」というより「話のイヤさ」の方にインパクトがあるように思われる。家族愛をテーマにしたハリウッド映画などのエンダーテインメントがよくあるが、ある意味その陰画ともいえるような作品。