‘ダーティー・ハリー’2〜5

 NHK-BSでよくやっている、関連映画を片っ端から(笑)放送し続けるシリーズ。今回は‘ダーティー・ハリー’だった。録画して2〜5を観た。1は見逃したのかと思ったら今回はやっていなかったようだ。備忘録的に雑感を。

2. 悪質な犯罪者が次々と殺害される事件が起こる。どうやら罪を免れる犯罪者が後を絶たないことに怒りを感じた犯人が制裁を加えているらしいのだ。いったい真犯人は。
 犯罪者を追いつめることにかけては手段を選ばないハリーが、同質なタイプの犯人を追うという話で、ミステリとしてもよく出来ている。当たり前だがアクションシーン(特に終盤のバイクにまたがるシーン!)でのクリント・イーストウッドのかっこよさが光る。またハリーの無茶なキャラクターや女性にモテることをネタにしたわずかながらのユーモアも隠し味になっている。
3. 上司の思惑から経験の乏しい女性刑事と組まされることになったハリー。ほどなく二人はテロリストによる市長誘拐事件の解決に取り組むことになる。
 ハリーは正義感は強いものの昔堅気で女性に対する偏見が強い。よく指摘されていることだが、ハリーは西部劇のガンマンなのだな。そんな主人公が現代に現れたらという話ともいえて、そんなギャップみたいなものがよく出ている。
 今でこそ女性刑事が主人公のドラマなど当たり前だが(篠原涼子の‘アンフェア’なんて完全にダーティーハリーを意識している)、本作のムーア刑事は経験も浅く解剖にも気分が悪くなるような一般人に近い設定で、そういった女性刑事の系譜としてはまだまだ過渡期のものである感じだ。
4. 集団レイプ事件の被害者が復讐を果たしていく。ハリーは事件の真相に迫るが。
 この作品では復讐が動機であり2とは若干内容が異なるが、現代犯罪で私刑を行うとはどういうことか、正義とはいったい何かというテーマは2と共通する点が多く、シリーズ全体にも通底したテーマといえるだろう。メリーゴーランドのユニコーンの使い方が凄かったな。
5. ロック・アーティストが主役の恐怖映画をめぐって連続殺人が起こる。TVレポーター、中国系警官の相棒と共に事件を追うハリー。
 この作品の犯人の動機はパーソナルなもので、正義とは何かというテーマとは離れている。時代の流れをうけた犯人像なのだろう。また後半のリモコンによる爆破など小道具によるチェイスの面白さはあってそれも新機軸といえるが、細部へのマイナーチェンジで対応せざるを得ないシリーズとしての苦しさもチラリ。Welcome to the jungleの使い方もやや間が抜けた感じで、時代とのずれがみられる。ていうか、ガンズが流れているのを聴いてダーティーハリーがこの時期まで撮られていたのかとむしろ驚いたくらい。この辺が潮時だったんだろうなという感もある、やや寂しいシリーズ最終作である。ロックスター役でWelcome to the jungleを口パクするジム・キャリーは(出ていると知らなかったこともあり)本筋と関係なく笑ってしまった。