『MM9』 山本弘

 肩の凝らないSFを読みたくなり、ドラマ化もされてすっかり知名度も上がった本作を手にした。知らない方のために念のため書いておくと、怪獣が暴れそれを特殊部隊が退治すというウルトラシリーズの世界観を現代風にリメイクした作品。基本的には一話完結の連作短篇集になっている。

 怪獣災害の集中する日本。主人公たちは気象庁内に設置された怪獣対策のスペシャリスト集団“特異生物対策部”のメンバー。個性的でユニークな面々だが、人類を守る気概は誰にも負けない!頑張れ“気特対”。

 気象庁内、それから<隊>じゃなくて<対策部>というあたりがイイですね。それで購入してしまった。あとこの“気特対”の人たちの仕事は調査がメインで、攻撃は自衛隊にお任せというのも現代的。マスコミ対策とか損害賠償とか気にしているところもおかしい。こだわりのSF作家である著者のこと、怪獣ものの矛盾については抜かりなく手を打ってある。ただ物理法則に従わない怪獣の姿や能力について、多元世界の視点を盛り込んで<多重人間原理>として処理しているんだがやっぱりどことなく騙されているような感じがある(世界は観測者である人間の認識により変貌する、というようなタイプの理屈。SFではよくあって面白く仕上がる場合もあるんだが、怪獣で使用されるとちょっとズルいような気になる)。
 一話完結だけど話には連続性があってその意味ではラストの作品「出現!黙示録大怪獣」が一番盛り上がるかな。TVドラマの方は設定をいじってるらしく、その辺は妥当かな(観ていないけどね)。