映画‘ベンダ・ビリリ!〜もう一つのキンシャサの奇跡’

 渋谷シアター・イメージフォーラムで観てきた。日程の関係で昨日しか行けなかったのだが、結果的に初めて生ピーター・バラカン氏を見ることも出来た(笑)。
 映画の方は障害を持ちながら決して音楽による成功をあきらめない不屈のリーダー‘パパ・リッキー’が、自ら作ったサトンゲを操るストリートチルドレンの天才少年ロジェと出会いバンドを成功させていくというフィクションの様なドキュメント。サトンゲの演奏の様子もアップで登場する。
 5年かかったレコーディングの途中には家のないリッキーたちが身を寄せていたシェルターが全焼してしまうという悲劇もあった。「こんなこともあるさ」と語るリッキー。その静かな物言いの影にどれほど過酷な経験があったのかと思うとその発言の重さに圧倒される。
 その一方で綺麗事ではすまない現実も描かれている。仕事のない少年たちは当たり前のように盗む。彼らの仲間うちでもそれは例外ではない。またストリートの首領であるリッキーは面倒見よく金が入れば少年たちに酒を惜しげもなくふるまう(笑)。
 ポリオのワクチン接種がきちんと行われていないためらしくコンゴでは大勢の麻痺を持つ人々がいる。そんな人々が行う両手でボールを運ぶサッカーのダイナミックさには眼を見張るものがある。いかに自分が固定観念にとらわれているかを思い知らされたなあ。
 さてこの副題「もう一つのキンシャサの奇跡」のキンシャサの奇跡とは何のことはない、6月に観た映画‘ソウルパワー’のボクシングの試合のことではないか。バラカン氏によるとスタッフ・ベンダ・ビリリのメンバーの一部はあの音楽イベントを見ていたそうだ。歴史はつながっているのだ。両方観ておいて良かったなあ。
 世界中で話題になっていながら実は5万枚しかまだ売れていないとのことで、必ずしも大きく彼らの生活が改善しているわけでもないらしい。オレもレンタルだけじゃなくて買わなきゃ。