『クリプトノミコン1 チューリング』 ニール・スティーヴンスン

 全4巻の1冊目。
 暗号解読をテーマに第二次大戦中と現代の話が平行されて語られる。大戦中の方はさらにアラン・チューリングとローレンス・プリチャード・ウォーターハウスらの暗号に関する頭脳戦を繰り広げる話と戦場がメインとなる下士官ボビー・シャフトーの話の二つに分けられるので、3つの話が展開されていることになる。現代パートはローレンスの孫ランディのコンピュータ系のビジネスの話。
 「スノウ・クラッシュ」もそうだけどこの作家、柱になる話がどっしりあるタイプではなく、様々なエピソードが連なって進行する。ただそれら薀蓄に富んだエピソードがどれも滅茶苦茶面白い。硬軟取り混ぜ色んなこと知ってるんだよなー。この人が短篇を書くのが苦手というのも(解説に書いてある)興味深い。例えばそれぞれのエピソードをブツ切りにすると一応短篇になるような気がするが、それだと小説を書いている気がしないんだろう。エピソードの羅列に一見なりそうな書き方なんだけど、全体を貫くイメージがあるんだろう(それはまだ1巻目なのではっきり見えない)。とにかくボビーのロマンスの話とかランディの破局の話なんかを掘り下げるともっと盛り上がりそうなんだけどそれをしないのがこの作家流(もっと長くなっちゃうか)。何はともあれ続きが楽しみ。