SFファン交流会1月

 初めて行ってみた。今回は2010年SF回顧(国内編)。ゲストは森下一仁さん、大森望さん、日下三蔵さん。
 いや昨年はほとんど国内小説(SFに限らず!)の新刊を読んでいないんだよなあ。短編の方はちょっと読んだんだけど。そういう意味では今ひとつな立場だが。印象に残った事を断片的に。
 
 全体を通して大森・日下ご両名が審査員の創元SF短編賞アンソロジー『原色の想像力』からコンテストの話がよく出てきた。まずはその辺の話を羅列するか。
・『原色〜』は突出した作品がなく、一方でまずまずの作品が並んだのでああいった出版の形になったとのこと。
・創元SF短編賞の場合応募数は500位。紙コピーで届くので段ボール3個分らしい(笑)。
・一般に応募の数と質の高さは比例しないらしい。へえー。
・応募作品を全部読むと宣言した大森さんに合わせて日下さんが苦労されているという話。大森さんは無理することない、と言っていた(笑)。
・応募規定違反の中に天才が混じっていたらどうするのだ?というのはよく読者が思う疑問。大森さんの返答(私なりの要約なのであしからず)「必ずしも全部読まなくても優れた才能かそうでないかは分かる。全体で百十位くらいの作品を(最後まで読まくて)二百位くらいに間違えるようなことはあるかもしれない。ただ才能が埋もれるというようなことは無いと思って安心して応募してください(笑)」というようなことだった。SFに限らずどのコンテストでも審査員の方は量に苦労しながら規定違反でもある程度は目を通すようにしている印象。才能が無理解によって埋もれているというような話はそんなしょっちゅうあることではないようだな。
・NOVAについて森下さんが大森さんにもう少し女性視点の小説が入った方がいいのではないか、という指摘をされていた。
・日本SF新人賞は徳間から出版されているがこれが(一部を除いて)ホントに売れていなかったらしい。SF交流会の参加者がほとんど買っていないのだから、そうなんだろうなあ。オレも買ったことない・・・。その辺の金銭的な問題も多少影響して新人賞が休止になったようだ。大森さんによると「新人賞の成果はコンテストで選出された作家が今後活躍するかどうかだ」。
・日下さんによる日本SF黎明期(大体20世紀前半あたり)のアンソロジーが出るらしい。

 さて長編の方は小川一水『天冥の標』と上田早夕里『華竜の宮』の評価が高かった。どちらも小松左京的なヴィジョンがベースになっているところに森下さんが注目しておられた。これをどうとらえるか、ということだが、まあ読まないとな。変なものの話も出たが、たぶん読まないから略(笑)。

 短編について。森下さんが瀬名秀明「希望」に言及。個人的には昨年のベストなんで共感。特に一家言あるSFファンの感想を聞きたい作品(どうやら気に入らないという人もいるらしい)。年刊SF傑作選の出版前なんであんまり選んだものがはっきり出ないせいか盛り上がりに欠けていたよ(笑)。「テルミン嬢」は選ばれるんだろうなあ。とにかくSFマガジン2010年2月号には傑作が多いらしい。いつか読みたい(<こればっか)。あっ津原泰水のSF系を多く含む近作の短編集が出るらしくそれも楽しみだな(ただ結構読んじゃってんだよな、むしろ未読のミステリ作品とか読もうか、いやいやこれは自分の話)。

 最後にちょっとだけ登場したノンフィクション系の話。鏡明二十世紀から出てきたところだけれども、なんだか似たような気分』にはSFマガジンで紹介されないようなSFが多く言及されているらしい。さっそくポチッと。森下さんは「もっと多くSFにかかわって欲しかった」と言っておられた。単なる読者からすると鏡さんはSF偉人の一人だけど、中心として活躍して欲しかったということなのかな。

 全体として森下さんのSFの多様性を意識した立場が印象深かった。