『NOVA2』書き下ろし日本SFコレクション 大森望責任編集

東 浩紀,恩田 陸,法月 綸太郎,宮部 みゆき,神林 長平,倉田 タカシ,小路 幸也,新城 カズマ,曽根 圭介,田辺 青蛙,津原 泰水,西崎 憲

発売日:2010-07-02

先にNOVA3を読んでから読了。これもなかなか楽しい作品が並んでいる。
「かくも無数の悲鳴」神林長平 宇宙のおたずね者がおそわれた予想もしない自体。まあまあかな。
レンズマンの子供」小路幸也 廃墟となった工場で主人公の少年が見つけたレンズ。これは<ジュヴナイル>ですな。懐かしい手触り。
「バベルの牢獄」法月綸太郎 サイクロプス人と情報戦を繰り広げる人類。むむこれは(笑)。いや参りました!法月先生のSFサイコー!
「夕暮れにゆうくりなき声満ちて風」倉田タカシ 実験的な作品。いちおう丁寧に読んだけど、印刷技術が十分に対応しきれていないところが惜しい。
「東京の日記」恩田陸 何か異常な出来事が起こった東京の平凡な日常。チンドン・ミュージックがお好きなのかちょっと気になった。
「てのひら宇宙譚」田辺青蛙 ユニークな個性が感じられる掌編集。
「衝突」曽根圭介 この作者の作品は初読。現代流の破滅SFで切り口がちょっと新しい感じ。
クリュセの魚」東浩紀 先にNOVA3を読んでしまい・・・とにかく論客のイメージが自分には強いので正統派の火星SFはやっぱり意外だなあ。
「マトリカレント」新城カズマ 海を舞台にした神話風の世界がSFに展開。新しいものを取り入れていくのが巧みな作家だがこれはピンとこなかったな。
「五色の舟」津原泰水 戦時中に自らの身体を見世物に食いつなぐ虐げられた人々。妖しくも美しい評判どおりの傑作。ラストには陶然となってしまった。
「聖痕」宮部みゆき 凶悪な事件を起こした少年。動機も解明され更正の道もみえていたのだが。典型的なミステリーからの転調が素晴らしい。たしかにある意味では問題作。
「行列」西崎憲 本書のエピローグのような小品。ミュージシャンでもあったのを知ったのは本書で。驚いた(笑)。

集中ベストは「五色の舟」。「バベルの牢獄」「聖痕」が同率2位かな。