『ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』 アリソン・ベクダル

副題にあるように家族についてのことが描かれているコミックである。柳下毅一郎さんがブログで紹介していることから、フツーのものではないのではと思っていたが・・・。
帯にも書かれているようにこれは<ノンフィクション・コミック>で要は自伝的な内容だ。作者アリソン・ベグダルとその父親との関係が軸になっていて、文学志向芸術志向の強い一家だけあってそこにフィッツジェラルドプルーストジョイスなどなどの引用や符号がどんどん入ってくる。しかもかなり個性的な家族でいろいろあるのだが、まあその辺は読んでのお楽しみ。最近様々な海外コミックが紹介されるようになったがヒーロー物やSFばかりではなくこういうものもあるのだと驚かされた。内省的かつ抑制の効いた叙情的な語り口は魅力的でさほどの文学的素養がなくても十分楽しめる。海外文学ジャンルでも年間ベストに食い込む可能性が高い大傑作。