『鎌倉夫人』 立原正秋

 古書市で見かけた本。この人の作品ははじめて読む。

 父がやっていた鎌倉の医院を守るため、いとこのプロポーズを断って医者と結婚した主人公。しかし夫は、父が晩年に結婚した義母と公然と関係を持っている。悩みを打ち明けてしまういとこは遊び人でそこかしこに愛人がいて・・・。

 男難というか登場する女性たちがいい加減な男たちに振り回される話。さすがに昭和41年の小説でやや感覚的に古めかしい部分も感じるが、全体としていい意味で通俗的でリーダビリティは高い。終盤は少々意外な展開。また作者が鎌倉に長く住んでいただけあって、行動範囲の距離感が地元民には非常に分かりやすくその部分でも大いに楽しめる。読了後作者の意外な経歴を知る。評伝とか面白そうだなあ。