『アメリカは歌う。 歌に秘められた、アメリカの謎』 東理夫

 本の雑誌8月号で青山南氏が言及していた本。カントリーの世界にはマーダー・バラッドという実際の殺人事件を扱ったものが数多く存在するというので、興味を持ち早速購入。
 マーダー・バラッドについては本書の第二章にあたり、背景に貧しく独特なアパラチア地方の文化と歴史があることが解き明かされる。全四章からなり他の章は貧しい肉体労働者・奴隷制下の黒人・抑圧された女性の歌を題材にしていて、いずれもアメリカの影の部分に追いやられていた人々だ。そうした人たちの声なき声が歌にのせられていく、というのが本書のテーマである。黒人奴隷たちが作り歌ったニグロ・スピリチュアルの歌詞に込められた裏の意味を書いた第三章がスリリングだが、他もアメリカ文化・カントリーに造詣の深い著者ならではと思わせる面白さだ。カントリー・ミュージックは疎かったが興味が湧いてくるなあ。ジョニー・キャッシュも聴いてみようかな。また本書は楽しみながら読むうちにアメリカの入植の歴史についての知識もつくというお得本でもあるね。

※8/14追記 本書冒頭で出てくる曲ジョン・ヘンリーについては去年自分で言及してたのを忘れていた。記憶力の劣化が止まらぬのう・・・(苦笑)