『マインド・イーター(完全版)』 水見稜

 宇宙に進出した人類を待ち受ける存在マインド・イーターは不治の病を引き起こしその行く手を阻む。強力な敵に人類は絶望的な戦いを挑むが・・・。
 1980年代に一部で高評価を得ていた連作集が完全版としてリニューアル復活。創元の日本SF復刻は良心的な企画が多いがこれも素晴らしい。
 描ききれないような邪悪な存在をいかにして描くかについて様々な手法やアイディアに取り組んでおり、大変野心的。また宇宙に出ることが出来ない人類という視点はディレイニー「スター・ピット」などニューウェーヴとの共通性が感じられ、日本SF史的にも重要な位置を占めると思われる(当時数作読んだ記憶があるが、あんまり凄さに気づいてなかったなー)。サスペンスフルで冒頭を飾る「野生の夢」や豪快な展開の「夢の浅瀬」などスケールの大きいSFらしい作品が本筋のシリーズだが、未来の日常が描かれ音楽をテーマにしているさりげない「サックフル・オブ・ドリームス」が一番好きだったりする(一番ディレイニーっぽい感じもする)。