SFマガジン2011年5月号チャールズ・ストロス&コリイ・ドクトロウ特集

 さて去年のSFマガジンの読みきり消化シリーズ。とはいえ2回目にしてこれでとりあえず最後。5月号はチャールズ・ストロス&コリイ・ドクトロウ特集。簡単に言えば近年のネット・ハッカー文化特集といった感じ?
 

「無線人」ストロス&ドクトロウ
 情報アクセスが管理された社会でハッカーがそれをうちやぶる話。あまりにストレートなハッカー小説だなあと思ったら2004年の作で少ーし古いんだな。ただこの特集解説にも登場するウィキリークスのような現実世界の事件を予見しているといえなくもない。ハッカーSFのアンソロジーを新しく作るとすると収録される気がする。
「酔いどれマンモス」ストロス
 未来社会の大金持ち達の狂想的な日常を描いたパーティSF。ストロスらしくアイディア満載で楽しい。「ミサイルギャップ」より落ちるけど、自分的にはストロスははずれたことがない。
「エインダのゲーム」ドクトロウ
 ネットゲームにはまる少女。友達からゲームによるもうけ話を持ちかけられて。ドクトロウの考え方にはブレがないようだけど、この作品のほうがネタ的に親しみやすい。
ヒロシマをめざしてのそのそと」ジェイムズ・モロウ
 太平洋戦争終結へトウキョウ政府に降伏を迫るべく、彼らの前でアメリカの最終兵器たる怪獣の破壊力を見せつけようという計画に一枚かむことになった怪獣映画の名優。とくればとんでもないスラプスティックコメディだと思うよね。でもその俳優が追想録を書いているところが大枠になっていて、むしろ取り返しのつかない歴史を描いた話なんだよな。その辺は意外だったんだけど、作者の誠実さも感じられる。