『双調平家物語10 平治の巻? 平家の巻』 橋本治

 保元の乱の後権力を手中にした信西が反発を買い討伐され、今度は後白河法皇に寵愛により地位を得た凡庸な男信頼が権勢を誇るようになる。その辺の流れは謀り事の応酬といった感じでやや退屈なのだが、平治の乱でいよいよ平氏・源氏の対決の図式になり、特に悪源太義平が暴れ出すと俄然話が面白くなってくる。その一方で運命に翻弄される子どもたちが涙をさそうんだよな。京都の描写は地理の知識があるとより楽しめるのかもしれないと感じた。
 それにしても清盛を筆頭にどうにも平氏に魅力が乏しい。手を汚したくなくて政治では絶えず策略をめぐらせる一方、戦闘の方ではあんまり戦略が無くて物量で圧倒みたいな。まあ平氏が悪役のフィクションだから仕方が無いわけだけど、この古典中の古典の図式を乗り越えなきゃいけないのだから大河のスタッフも大変だね。