『USAカニバケツ』 町山智浩

 映画評論でお馴染み町山智浩さんはアメリカに関するエッセイストでもあり、硬軟何でも来いなのが他の追随を許さない所以であるが、巻頭言にあるように本書では十八番の芸能ネタなど軟の方が中心。そこに現れるアメリカの素顔が印象的なのだが、該博な知識と鋭い切り口があってのことだろう。芸能ネタ以外でも密造酒とレースの話(P97〜)や壊れにくいゴールポストづくりの話(P121〜)や主に西海岸を中心とした町の歴史をたどる3章とかも大変興味深く、ネタの幅広さに唸らせる。最初の単行本は2004年に出たものだけに少し時間が経っているが、元々豊富な情報量にちゃんと後日談も加わってこのお値段だから実にリーズナブル。それにしても全く怖ろしいような馬鹿げたような何とも摩訶不思議な国なのだが、ちょうど今日読んだ「ゴキブリ食いコンテストで出場者死亡」のニュースもまたアメリカは南フロリダだったことをふと思い出した。