『ゴースト・ハント』 H・R・ウェイクフィールド

主に1920〜30年代に活躍した英国の怪奇小説作家の短篇集。
「赤い館」 とある家族が引っ越した古い館にはなにものかが。こういうパターンが多いんです。オチは好き。
「ポーナル教授の見損じ」 長年のライバルに常に後塵を拝するポーナル教授。チェスものであり、対決ものの要素は他の作品にも目立つ。大人の嫉妬が出ていて傑作と思う。
「ケルン」 二人の親しい友人が訪れた村で守られていた雪山のしきたりを破ってしまう。禁忌をおかすパターンもあるな。普通。
「ゴースト・ハント」 幽霊屋敷中継で話が進む、かなり斬新な作品。コミカルなタッチが楽しい。
「湿ったシーツ」 叔父さんの財産をあてにする男とその妻。ストレートな館もの。
「“彼の者現れて後去るべし”」 悪魔的な人物に財産を巻きあげられている旧友を救おうとする弁護士。クロウリーがモデルになっているらしい。またも対決ものだがこれもいい。個人的には対決ものには熱気があり傑作が多いような気がする。
「“彼の者現れて後去るべし” 古本屋に謎の日本人が持参した詩集は驚くべき傑作だった。一生に一度の傑作のためには魂を売り渡しても、と一度でも思った出版関係者には底知れぬ怖ろしさが感じられるのでは(笑)。
「目隠し遊び」 館ものの小品。切れ味はよいがまあ普通。
「見上げてごらん」 病気療養で南の島へ赴いた主人公が出会ったのはずっと上を見上げている変な男。正攻法なホラーなんだけど、見上げる男というイメージが面白くて好きだな。
「中心人物」 舞台ものでオチは普通っぽいが、やっぱりこういう小説と舞台というのはよく似合う。
「通路(アレイ)」 安く手に入れた館はいわくつきというこれまた典型的な館ものパターン。悪くないが続くとさすがに・・・。
「最初の一束」 因習にとらわれた村で神父は。禁忌もの。これまた悪くないが続くとやはり。
「暗黒の場所」 これも館ものだが、後の「恐怖の館」事件をどことなく連想した。
「死の勝利」 館と女主人の話はナイトランドVol3のカール・エドワード・ワグナー「夜の夢見の川」と共通し、ホラーの典型的なモチーフの一つなのかもしれない。
「悲哀の湖」 妻殺しの疑惑をかけられた主人公。さらに周囲の人物が亡くなっていく・・・。独白が効果を上げている。これもいいな。
「チャレルの谷」 インドで生活する主人公は家族を連れてチャレルの谷へのピクニックを思い立つが、インド人の部下は賛成しない。舞台が他の作品と違うがこれまた禁忌もの。同様なテーマが続くのでやや印象が弱くなるが作品としては悪くない。
「不死鳥」 数学者の主人公は、高齢で時代遅れになった上司の教授を疎ましく思っていた。一種の対決ものであり、また数学研究所を館とする館ものの要素もある。これまた出来はいいのだが、どうも同じようなパターンで印象は弱くなる。
「蜂の死」 先生、変な夢を見るんですという精神分析ものだが、そこに三角〜四角関係が絡んでいくところが巧みで読ませるのだが、オチがもう一つピンと来なかった。個人的にはちょっと惜しい作品。

館、対決、禁忌といったパターンが多かったな。ツボはおさえているんだけど同傾向が続く分どうしても集中力を殺がれてしまうところがあるが総じて作品の質は高く、ところどころユーモアが混ざるところも味があってよい。