『翼の贈りもの』 R・A・ラファティ

『昔には帰れない』が出版され一部で盛り上がりをみせているラファティ。積んでいたちょっと前の短篇集を読了。
「だれかがくれた翼の贈りもの」 イニシエーションをテーマにした痛く切ない傑作。
「最後の天文学者」 天文学が意味を失ない過去のものとなった世界。どことなくマジック・リアリズムっぽい。
「なつかしきゴールデンゲイト」 「みにくい海」といいラファティは酒場でピアノを弾く女性が好きなのかな。
「雨降る日のハリカルナッソス」 ソクラテスの知られざるエピソード。これ楽しい。
「片目のマネシツグミ」 変わり者の科学者が取り組む前代未聞のプロジェクトとは。これはSFミステリじゃないですか。こういう技も持ってたか―。
「ケイシィ・マシン」<全てが分かる>機械の話。さっぱり分からないんで数回読み直した(いや洒落じゃなくて)。で、どんな機械かはやっぱり分からないのだが、話としては「最後の審判形而上学SF?」頭が爆発しそうな作品で、分かんないんだけどたぶん大傑作(笑)。
「マルタ」 一転これは聖女をテーマにしたユーモアたっぷりの逸話といったところ。登場人物たちに土着的といってもいい存在感があるのがいい。
「優雅な日々と宮殿」一種の超人テーマ、なのか?「専門化した人間が九人いれば、一人の十全人間がすることは、ほぼすべてこなせる」あれ?じゃヒーローものなんて意味ないってこと?(笑)
「ジョン・ソルト」 これはキリスト教色が強いかな。なかなか難しい。
「深色ガラスの物語」 地球史スケールで描かれるステンドグラスの歴史。色鮮やかな一篇。
「ユニークで斬新な発明の数々」 自己回帰理論がすごい。これまた「ケイシィ・マシン」をこえるスケールのでかさ(話はこっちの方が分かりやすい)。こんなひどいハッピーエンドもなかなかあるもんじゃないな(笑)。

ラファティはおそらく「九百人のお祖母さん」が分かりやす過ぎたために
多少誤解されている気がするが、それにしてもこの本は歯応えがありまた意外性という意味でも予想をこえた内容だった。とにかくいえることはラファティは他のどの作家とも似ていないということだ。読む度に驚かされる稀有な作家だ。