SFマガジン2012年12月号 The Best of 2011

海外SF短篇特集の訳載のものはなるべく読むようにしている。
「アース・アワー」ケン・マクラウド 近未来のフィクサーが主人公の権謀術数の世界。まずまず。『ニュートンズ・ウェイク』は面白いのかなあ。
奉仕者と龍」ハンス・ライアニエミ 遠未来で奉仕者(サーバー)が宇宙を創成する話・・・ということだが、ファンタジー的なイメージにハードなアイディアで裏付けを与えるというのが持ち味なのかな?ちょっとピンと来なかったが短いし作家への評価は保留。
「穢れた手で」アダム=トロイ・カストロ 少女時代に過酷な運命にさらされた主人公が異性種族との特殊な交渉の担当者となる。これは面白かった。主人公の苦悩とそれを振り払うような熱さがいい感じ。これはどこかのアンソロジーにも再登場しそう。
「地図を作るスズメバチ無政府主義のミツバチ」E・リリー・ユー スズメバチの国に搾取されるミツバチの国。ファンタジーだけど論理性の高い世界、というSFファンのツボをついている。短いがこれもよかった。
「静かに、そして迅速に」キャサリン・M・ヴァレンテ 知床半島を舞台背景にイタリアと日本の混血の天才プログラマーの開発した<家>に自我が芽生えて・・・という話。これもファンタジー的なイメージにハードなアイディアというパターンだがこの作品はところどころ目を惹かれる箇所があった。アイディアは一読ではよくつかめず、さらに様々なレイヤーの話が出てきて、なかなかの難物だが、豊かな自然を背景にしたトランスジェンダー的な要素を多分に含んだエピソードのいくつかは魅力的。