『偽原始人』 井上ひさし

 教育熱心な親に東大に行けるように願いをこめて名づけられた池田東大(とうしん)君は小学五年生。家庭教師に学習塾に大忙しだが、勉強が大嫌いな彼は持ち前の機転と仲良し2人の協力で塾をこっそりサボった上にその授業料で遊びまわる毎日。その反発心には理由があった。
 先日ネットを巡回していたら、この本の名前を見かけ懐かしくなり古書を購入、読んでみたらラストは覚えていた(ちゃんと読んだ記憶がないから、初めの方と最後だけ読んだのかな)。昭和50年に新聞連載されていたという情報がネット上にあり、新聞で読んだ覚えもあるから自分は8歳でこれを読んだことになる。煙草をふかしバレてもぬけぬけと言い訳する小学生が暗殺など陰謀を企てる話を割と平気で読んでたんだな(笑)。まあよく分かっていなかったのかもしれない。
 

 (以下 ややネタばれ)


 内容としては暗号・暗殺・誘拐とミステリーの要素が強く、起伏に富んだ展開で飽きさせない。ただ、これだけ頭のまわる主人公の成績が悪いというのは解せないというツッコミはさておき、現在からみると病気や女性キャラクターの位置づけなど結構偏りがあって違和感を感じ、再刊されないのもやむを得ない気がした。親子関係や教育問題についてたびたび言及されるものの表面的で平板な印象で、最終的に母親の愛情に主人公が気づく場面も取ってつけたように感じられた。どちらかというと受験戦争や教育問題をネタにした娯楽作と考えた方がいいのではないか(ラストは暗いけどねえ)。