SFセミナー2013

 SFセミナー行ってきた。今回はいつもtwitterでやり取りしている方々とオフ会状態(実はオフ会的なことも初めて)となり、個人的にはお祭り状態で最高に楽しいSFセミナーとなりました。ありがとうございました〜♪、と報告も終了していいやって気分もあるが、記録がないと自分が忘れてしまうので(笑)、感想を書き留めておきます。

(午前の部)
1. Gene,Meme,Hacking ― 藤井太洋インタビュウ近未来を舞台にした

 恥ずかしながらまだ作品を読んでいないのだが、「Gene Mapper」はプログラマーという経歴を生かし近未来を舞台にしたサイバーパンク的な要素のある小説のようだが、お好きなSFはハードSFでポジティヴな未来像をイメージされているとのことで、既に評価も高いようだし新しいイメージが伝わってきて聞いているだけでワクワクする。奄美大島出身、舞台芸術を経てプログラマーになり、というユニークな経歴も魅力大。爽やかでトークも歯切れがいい方である。

2. シスターフッドの時代
 ジェンダーは重要なテーマだが、いかんせんこれまでの候補作も読んだり観たりしていないのが大部分・・・。今回の話題となった2011年度作品についてもアニメ含めどれも知らないので正直話題についていけなかった・・・。某所より教えがあったので『終わり続ける世界の中で』は読んでみようかしらん。あとはル=グィンからまず読もうかなあ(<そこからですかあ?とお叱りを受けそう)

3. 海中ロボットの現在と未来 ― 鉄腕アトムは海から生まれる
 海中ロボット研究の第一人者浦環先生による海中ロボット講義。深海+ロボット!楽しいなあ。例えば深海でのカニの日常的に共食いが必要な生態が明らかにされたり、技術によって新しい世界が繰り広げられるところがやっぱりSFファンとしては興奮させられる(もっとも華やかな成果の裏側には大変なご苦労があるのだろうけど)。鉄腕アトム作品の場面をポイントポイントで取り入れて、最後には海底ロボット帝国を築くのだ!という素晴らしくエンターテインメント性溢れたプレゼンテーションに脱帽。宇宙開発に比べ日蔭者で・・・というちょっと愚痴っぽいお話も実は面白かったです(笑)。

4. ライブ版SFスキャナー・ダークリー
 若手のお二人の聞き手によって、アンソロジスト/翻訳家の中村融さんのこれまでの経歴を振り返る企画。当方は中村融アンソロジーの大ファンなので、個人的には今年の目玉の一つ。それにしても読み始めのころから作品の長さを記録していたという根っからのアンソロジスト気質には驚かされるな〜。生まれつきのアンソロジストか?(笑) SFにヒロイックファンタジーにと幅広いファン活動を早くから精力的にされていたということで、読み手として多様なジャンルを強い胃袋でどんどん消化していくイメージである。なんか強い感じ(笑) 長年のSFファンの方が、昔から自分が読んだ小説を知らない人達に説明されていたと教えてくれた。ということは、聴衆が多かったり少なかったり様々に場所が変ったりする中、時が流れ(おそらく)30年以上、中村さんがSFファンに小説の説明をしている光景が続いて来たという事実。時間を短縮したような動画が頭に浮かんでしまった。なんかすごいと思ってしまった(笑)

(夜の部)

1. 20:00〜21:00 中村融の部屋
 上の企画の続き。創元の小浜徹也さんが中心になり、中村さん個人というよりは当時の古いファンダムの話や翻訳家という仕事が今後どうなるか若手翻訳家の育成はどうするのかといった話になっていった。読者としてそれもまた面白く興味深かった。

2. 21:10〜22:30 アンナ・カヴァンアサイラム・ピース』読書会
 司会の岡和田晃さんのお誘いもあり出演者として加えていただいた。ということで個人的な2番目の大きな目玉企画。予定の仁木稔さん、夜明けちかしさんに加え、お馴染みSF評論家牧眞司さんも飛び入り。いやあ面白かった!前回2009年バラードの時は並み居る論客の方々に押され自らの準備不足もあり、お呼び頂いたのにほとんど機能しなくてもったいなかったので折角だから今回はしっかり予習をしていったよ!『ジュリアとバズーカ』もちょうど再刊されたので読んでいったし、『氷』も(短いから)再読出来たよ!ということで準備が功を奏し、多少盛り上げが上手くいったようです。有難いことに詳細は岡和田さんが今後纏めて下さるようだが、それにしても自分が参加者だとなかなか纏めるのは難しいんだなあ。ということで断片的になってしまうが、夜明けちかしさんの現代を生きる我々にとってのアンナ・カヴァンの問題提起といったお話、作家という視点での人称や表現の問題について言及された仁木稔さん、カフカとの比較をされた牧さんと多様な切り口が登場した。カヴァンは「幸福な世界から切り離されてしまった」孤独を描くが、あくまでも客観的な視点が保たれている、消極的に見えながら実はカヴァンは戦っているのだという評価も出て大変示唆に富んでいた。「それに比べてディックは(人間として)ダメな人なんだよな」という牧さんのオチには場内大爆笑でありました。

※追記 そういえばドイツ表現主義映画を思わせるという意外な話も出た。

2. 22:40〜24:00 これでアナタもSFスキャナー
 SFスキャナー(雑誌Analog担当)の東茅子さんの経歴をお聞きする企画。個人的にちょっとは洋書を読みたい(バリバリと、というのはさすがに諦めている)のでどういう経緯で洋書読みになられたのかはやっぱり興味深い。当然ながら読みたいとなると自然とスキルアップされていくのだなあ、というのが感想。ほんわかした雰囲気が大変楽しい企画でした。

3. セミナーオークション・ダークリー
 Oh No!オークション全敗でしたYo!思えば出品者の方々の他の出品者のものをセリ落としていく容赦なさに、戦う前から負け確定。自らの気合不足を痛感しました(苦笑)。それにしても世の中には知らない本が沢山あるのだなあ。

 いわゆるファンジンの活動が華々しかったころにSFファンとしてこうしたSFセミナーなど近辺に出入りしていたものの、どこにも所属せず結局そういった活動はしていなかったので、合間に伺った昔のファン活動のお話も大変面白かった。
 あと沢山の方のお話を聞いて、いろいろな土地や時代や世代の違いがあっても、どこかでSFに出会い、いつのまにか集っていく。そういう部分もあるんだろうなあということ。
 またこういう楽しい機会があるといいなあ。