『第九の日』 瀬名英明

 ケンイチくんというロボットを主人公にしたシリーズ。中心となる『デカルトの密室』がまだ未読なので多少作者の問題意識を把握し切れていない気もするが、連作短篇集なのでとっつき易いSFミステリ集。どれも先行作品のあるパスティーシュもの。
「メンツェルのチェスプレイヤー」 ポオの作品などが元。「ロボットに殺人が可能か」というテーマとチェスの勝負が鮮やかに融合。
「モノー博士の島」 もちろんウェルズが元。身体障害者のオリンピック出場という話はオスカー・ピストリウスを予見したかのようだ。
「第九の日」 クイーンやC・S・ルイスが元。タイトル作で最も長く、科学と宗教を対立軸に人間とは何かというテーマに加え、(前の2作にも見られるが)フィクションにおける記述の問題も追及されている傑作。(『第八の日』の内容があまり思い出せない・・・)
「決闘」 チェーホフが元。同時多発テロのイメージがコアにあるが、国際緊張の高まる作品背景は現在こそ重く感じられる。