『空の都の神々は』 N・K・ジェミシン

  兄弟妹である三神の争いで光の神イテンバスが勝利をおさめ、僕であるアラメリ家の人々を通じ空中都市スカイから<十万王国>を支配していた。主人公イェイナは辺境の小国ダールの首長。下級貴族でしかないが、アラメリ家の長デカルタの孫であり後継候補の一人としてスカイに招かれることになる。野蛮な出自と蔑まされるイェイナは神も人も混然となったスカイの権謀術数の世界に図らずも巻き込まれていく。

 アラメリの先祖は元々イテンバスに仕えていた神官であり、敗者の神やその眷族はアラメリに永遠に使役される身である。またイェイナは自らだけではなくダールの命運を担っている。というようなところは現実社会を思わせるところが面白い。複雑な異世界は非常によく計算され、幻想的な描写も美しく、ミステリ的な要素もピタリとはまっており、全体を通じて筆致は堅実で、全体に多少ゆったりとした展開にロマンス要素多めな部分には好みもあろうと思われるが、第一長篇とは思えない完成度である。