『赤い惑星への航海』 テリー・ビッスン

 大恐慌NASAが民間企業に売却され、火星飛行計画は頓挫。そんな中、ハリウッドから有人火星飛行を映画に撮ろうという話が持ち上がる。

 ユーモア短篇の名手ビッスンの本格SF。ハリウッドや火星飛行といった道具立てはいかにも王道路線だが、そこにアフロフューチャリズムの要素やラスタファリアニズムもあるかな、そんなところがユニーク。ビッスンをそういった作家と思っていなかったことでの発見もあるし、アフロフューチャリズムとラスタファリアニズムはよく考えればアフリカ回帰主義的につながりがあるもののFunkとReggaeとして分けて一緒に考えていなかった自らの迂闊さを気づかせられたし、非常に興味深い一冊だ。

twitterでこの本を紹介して下さったすけるさんによる読み応えのあるSF書評ブログ「わたしがSF休みにしたこと」での本書のレビュー。Jefferson Starship も含んでアメリカのポップミュージックの歴史への広がりを感じさせてくれる素晴らしい内容でその辺りにご興味の方は是非ご一読を。