映画‘パッション’

 最新の携帯デザインを扱う広告代理店で、奔放で華やかなクリスティーン(レイチェル・マクアダムス)と有能で控えめな部下イザベル(ナオミ・ラパス)は良好なパートナーシップで仕事を成功させている。しかしイザベルは密かに上司の恋人ダークと関係を持っていた。イザベルは自らの片腕ダニと共に画期的な広告の動画を作り上げたことから、クリスティーンとの間に亀裂が生じ始める。

 デ・パルマの最新作。最先端のビジネスオフィスが背景になるようなことは割合デ・パルマには少ない印象があり、前半はクリスティーンとイザベルとダークの三角関係が誰が真の悪か定まらない形で(まあダークは悪いけど)抑えた感じの心理劇として描かれ、おっこれは新機軸?と思ったが、成功するイザベルにクリスティーンが攻撃を開始し画面が暗転するといつもの画面とストーリーのめまいを起こすほどの映像マジックであっという間に(これまたいつもの)唖然とするようなラストへまっしぐら。うん!これでなくちゃ!いや〜堪能いたしました。監督、70越えても元気一杯なのがうれしい。一般性という意味では確かについていけない人も多々ありそうで、公開は短いのは残念だが仕方のない気もするが、是非多くの方に観て欲しい作品。あとリメイクだそうだが元はどんな展開だったのかなあ。

 

 以下若干ネタばれ。

 「ファム・ファタール」でもあった夢オチ的な手法が複数回使用され、まあある意味禁じ手がちょっと多いのは批判される可能性はあるが、流石に熟練の使い手であり、悪夢の生々しい手触りが巧みに表現されている。いやむしろ悪夢そのものを描き出している映画ともいえる。また転がる死体という描写も「ブラック・ダリア」などと共通し、主要なモチーフなのだなあと思った。