封印歌謡大全 TBSラジオ

 期待どおり興味深い番組だった。『封印歌謡大全』は読まないとなあ。ひとことで<放送禁止歌>といっても明確なルールがあるわけではなく、お上が「要注意歌謡曲」という指定をして(放送しても罰則があるわけではない)、結果自粛して放送されなくなるというのが実情である。ここに責任者不在の難しさがあり、さらにその「要注意」の理由も下ネタややくざネタから差別、政治問題と様々で一律に扱うのはとても難しい。ただ、番組でもふれられていたように空気感で囲い込み、なんとなく問題を覆う流れが後を絶たないのは悲しいことだ。わずか2時間の番組で扱うにはなかなか厄介なテーマだが、手際よくセンセーショナルに流れずに進行されていて聴きやすかった。
 個々の楽曲では岡林信康やパンタについてはもっと聴いてみたいと思った。服部良一の似非洋楽や放送局から誘拐犯(吉展ちゃん事件)によびかけた歌の存在は初耳だった(特に後者は各局で楽曲があったとのことで驚きだ)1988年の昭和天皇関連自粛の中「血を吐く」という歌詞が問題となったらしい演歌「不如帰」の歌手村上幸子の話(紅白歌合戦出場を逃し、その後31歳で病死)も印象深い。渡哲也、加山雄三、梅宮辰夫といった有名どころが並んでいたのも面白かった。特に加山雄三の「びっこの子犬」が放送禁止のイメージと全く相容れない牧歌的な楽曲でずっこける。そして最後の曲はRCサクセションの「サマータイム・ブルース」。なるほど絶妙なタイミング。
 そのほかこれはより個人的な感想なのだが、日本にもいろいろな音楽の流れがあるのだなあということ。もう少し日本の昭和音楽も聴いてみようかな。


あと、この問題関連で、松岡正剛氏の千夜千冊『放送禁止歌』もあげとく。