『青い薬』 フレデリック・ペータース

 主人公はジュネーブの漫画家。旧知の女性に再会し、意気投合してつき合いはじめる。それはどこにでもある男女の出来事なのだが、女性はその息子と共にHIV感染者だった。


 自伝的な作品らしい。愛する女性を支えながらも感染に怯え、連れ子への対応にとまどう主人公が等身大に描かれ、ともすると硬い内容になりがちなテーマが穏やかにほどよい情感で語られ大変身近に感じられる。観念的なパートもあり、その辺に好みは分かれると思うが素晴らしい作品である。
 惜しむらくはビビッドなテーマにも関わらず日本で訳されるのに12年経っていることで、海外コミック出版のブームが無ければ出版されることも無かったことは理解しつつも、ちょっと残念に感じてしまう。