『フィーヴァードリーム』 ジョージ・R・R・マーティン

 経営する蒸気船運輸会社が傾きかけたマーシュに好条件の出資を持ちかける謎の男ヨーク。一方農園主を装い、人を支配し生き血をすする〈血の支配者〉ジュリアン。19世紀中頃のミシシッピ川を舞台にした吸血鬼ものに軽くSFアイディアが組み込まれ、マーシュとヨークの奇妙な友情を軸に抜群のストーリーテリングでぐいぐいひきつけられる。キャラクター設定が明快かつ印象的で、特に豪快かつ一本気な不屈の男マーシュが主人公なので、血みどろの展開なのに全体が重苦しくならない。また外輪蒸気船冒険ものの側面が大きく、川を舞台にしたアクションも見せ場となっている。後半には輸送が鉄道に移行してしまう時代も書かれ、なかなか味があり、もしかしたら吸血鬼というより蒸気船の話を書きたかったのかもしれない。