『かまいたち』 宮部みゆき

　読みやすいものをさらっといきたくなり、宮部みゆき本を（とはいってもこれまで『理由』しか読んだ事はなかたけど）。
　杓子定規なジャンル談義をするとこの本は本格ミステリ、時代小説、ホラー/ファンタジーのジャンルにすっぽり納まるようなものではない。むしろそれら全てであり、総合エンターテインメントというしかないようなものになっている。表題作は集中No.1で、謎解きの鮮やかな時代ミステリの傑作といえるが、非日常的な要素が入り込んでくるものもある。でも、それらは現代の娯楽小説の要素として過不足なくはまってくるわけで、生半可なジャンル論は意味をなさなくなってしまう。さらに宮部みゆきが凄いのは、作品に伝統的な人情話という柱があることで、それにより日本作家の王道的な流れも感じられることだろう（またその人情話的要素を逆手にとっている仕掛けもあったりする）。
　こんな完成度の高い作品集が初期作というのはとんでもないことだ。ああやっぱりこの人ももっと読まないといけないなあ（そんな作家が増え続けてゆくのであった・・・）。