心の師

 突然であるが、我が心の師といえばBootsy Collinsである。世代的に80年代の音楽で育っているから、自分の指向性に影響を与えたのはPrinceだと思っている。いかがわしい香りにロック+ファンクの融合した音楽スタイルは当時随分驚いたものだが、音楽スタイルそのものは結局セールス的にも大きな潮流となっていく(同時代人としてちょっと恥ずかしいがマイコウ先生もそうした潮流の後押しをしていたのは認めなくてはいけない)。Princeはユニークな人でそのルーツにはJoni Mitchellまで含まれてしまうが、自分にとってはファンクの効能を教えてくれた有難いお方である(他に効能を教わった人に結局ライブを見ることはなかった江戸アケミがいる)。そんなPrinceのルーツにP-funkというとてつもなくアヤシい衆がいることを知ったのが先か、サイバーパンクブームの最中に本気なのかブームを勘違いしたのか分からぬままBootsy Collinsの“What's Bootsy Doin'?”のジャケットに衝撃を受けたのが先かはっきりと記憶はない。ただとにかく“What's Bootsy Doin'?”を聴いてこれだ!と思ったのは確かで、当時手に入りにくかったP-funkを何とか追いかけていったのである。で、この中の人物はさあのうずを名乗っていることからG.Clintonも好きであり、どちら派でもなくい。さらにとてもマニアと言えるほどでもなく、持っていないアルバム聴いていない曲も数多くあるが、P-funkが自分の音楽の基盤としてある。P-funkの中心はまあロック+ファンクと言ってよいが、根底にあるのは何でもアリの精神。もちろん安っぽい変な宇宙趣味もSFファンとしてワクワクさせられた(ワクワクしない人も多そうだけど)。奇妙な衣装に身を包みながらも「ファンタジーにこそリアリティがあるのだ」と歌う一抹の寂しさ。忘れてはならないのはミュージシャンとして生き抜いていこうというしぶとさ。その結果ヒップホップをきっかけに不振の80年代をP-funkファミリー全体が脱していくのである。90年代以降のG.Clinton作品に疑問を持つファンもいるかもしれないが、アルバムによってはいいものもあると個人的には思っている。
 話が広がりすぎてしまった。Bootsyである。新作もないのに何でBootsyかというと、今更ながら1997年の“Fresh Outta ‘P’ University”を聴きなおしてはまっているのである。2002年の“Play With Bootsy”も若手とうまくコラボしていて聴き始めはいいなと思っていたのだが、ゲストの担っている比重がやや大きく、悪く言えば「Bootsyの名を貸して、若手にほとんど作らせて最後にちょこっと顔を出して完成」みたいな感じもあって物足りないところもあった。それに比べると“Fresh Outta ‘P’ University”はベースも強力だし、曲も充実している。特にはまっているのがミディアムテンポで都会的で軽く(ほんとに軽く)切ない‘Ever Lost Your Lover’、クールなコーラスと転調がめちゃくちゃかっこいい‘Wind Me Up’あたりが心地よくバカみたいに何度も聴いている。ちなみに日本盤の解説はSFファンにはSFマガジンでおなじみの丸屋九兵衛氏。ブラックミュージック+SFという得難いツボをついた仕事振りでこのブログの中の者を喜ばして頂いている氏であるが、この盤の用語解説がまた大変素晴らしい。
 さて長くなってしまったが、なぜBootsyが我が心の師であるのか今ひとつ説明していなかった。ベースが素晴らしい、曲のビート感がたまらない、度派手な衣装が素敵(!?)、来日公演ライブで握手した(めちゃ個人的)などなどいろいろあるのだが、巧く表現できないので、最後に横山剣の言葉でしめることにする。
   

   以前・・・、いや、以前どころか、かなり昔、なんて本だったかは忘れちゃったけど、BOOTSYのインタビューが載っていて「あなたはなんでそんな大きな音を出してベースを弾くの?」という質問に対して「それは淋しいからだよ」って答えたワケ。俺はこの発言に思わずグッと来ちゃったんだよね。たまんないよね。いいね!いいね!いいね!(“Play With Bootsy”日本盤解説より)

↓衝撃を受けた1988年の“What's Bootsy Doin'?”。よくみるとサングラスが?マークである。(<追加 エセ記憶であった!本当はいつもの星印だった。失礼しました。)



↓最近聴きまくっている1997年の“Fresh Outta ‘P’ University”。


↓2002年の“Play With Bootsy”。ちょっとゲストの方が目立ちすぎかな。まあまあ楽しめる。フルアルバムでの新作を是非!
※追補  昨年クリスマスアルバムは出ていたのを忘れていた。