『美藝公』 筒井康隆作 横尾忠則画

  映画産業を舞台にした改変歴史物。経済大国ではなく、映画大国になった日本。美藝公という中心的象徴的存在(代替わりもある)となるスタア俳優を核とした映画産業で、脚本家である里井勝夫は素晴らしいスタッフに囲まれながら幸福に映画制作に没頭し続ける・・・。嫌な登場人物は皆無、スキャンダルを好む記者やファンも存在しないという設定で話がすすむ中、終盤に作者らしい毒が提示される。昔の映画界にについてはほとんど知らないが、映画業界が衰退する頃に書かれているだけあって、そうした流れに対する映画通としての作者の想いが背景にあるだろうことは分かる。そこにノスタルジーをみせながらも、理知的な考察が入り込んでしまうあたりが真骨頂とも言えるか。
 個人的には数多い横尾忠則の架空映画ポスターに感動。絢爛豪華で強烈な作品はどれも圧倒的。この人の画をみるとなんか元気が出る。ところで最近BSフジで横尾氏のインタビューを見たらいろいろ面白いことを言っていた。以下羅列。
 「ニューヨークは自分の創作に向かない。日本の風土の方が合っている。」
 「ウォーホルはサングラスをつけながら創作をしていた。だからあれだけ派手な色の作品になったのではないかと思った。」
 「現代美術というくくりから外れるものを自分がやればいいと考えている。その意味では自分にとっては<現代美術>というジャンルは在った方がいいのかもしれない。」
 「同時代の作家のものは影響を受けそうなのであまりみない。」
 「画家になったときは、作品が自分の思い通りにならずに苦労をした。」