たら本『夢見る機械』に参加

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 たらいまわし式・本のトラックバック企画、略して「たら本」。抜群にセンスの良いチョイスと仔細な解説で役立ちまくりのユニーク本紹介サイト、‘奇妙な世界の片隅で’kazuouさん担当の第39回のテーマは『夢見る機械たち』。不思議な「道具」や「機械」を扱った作品、ということでこれはSFファンにぴったりな企画。というわけで、これまでは読んでいるだけだったが、ちょっと遅れて初参加。あまりSFSFした、時間や空間をコントロールするようなものではなく、どことなく古めかしいというか、歯車なんかが使われていそうな(?)ものを選んだ(その方が<機械>っぽい気がしたので)。あと道具ものも少々。

 
・「変種第二号」  『パーキー・パットの日々』 フィリップ・K・ディック
 機械といえばディック。変な機械、恐ろしい機械、かわいい機械・・・。これは恐ろしい殺人機械、兵器の話。人間と区別がつかない兵器が忍び寄る。アメリカとソ連の戦争という設定は時代を感じさせるが、提示されているものは今や現実のものとなっている。

・「どんがらがん」  『どんがらがん 』 アヴラム・デイヴィッドスン
 こちらは兵器でもなんだか牧歌的。<どんがらがん>とも<山鉾>ともいわれる大砲を転がして恐喝をしている大砲組が、なんだかおかしい。

・「スターズのスタジオ5号」  『ヴァーミリオン・サンズ』 J・G・バラード
 初期バラードの比較的ストレートなSFアイディアもので、詩を作る機械<詩歌編集装置(ヴァーストランスクライバー)>の話。作られた詩がテープとなって舞うという、ややレトロなイメージも今となってはむしろ味わい深い。

・「庭園列車」  『隠し部屋を査察して 』 エリック・マコーマック
 今度はやたらとスケールのでかい列車の話。なにしろ庭園に行くのではなく、庭園がある列車なのだ。いや庭園どころか森だとか大河とか大自然がそのままある列車なのだ。こんな大ボラを機械の話といってしまってよいのか?という気もするが、二部に分かれたこの話の第二部には「機械」というタイトルがついているのである。

・「寿限無寿限無」  『どろぼう熊の惑星 』 R・A・ラファティ
 さらにスケールの大きい話、世界のはじまりの話である。何せ、天使が猿にタイプライターを打たせるのである。何のこっちゃ?という方もぜひぜひご一読あれ。

・「プリティ・マギー・マネーアイズ」(ハーラン・エリスン) 『ベータ2のバラッド 若島正
 スロットマシンが主役。ニューウェーヴだとかゴースト・イン・ザ・マシーンだとかいうことも出来るかもしれないが、つまるところ男と女の‘実演!夜のヴィブラート’( Oldies but Goodies)な話である。もうどろどろ。

・「時計収集家の王」 『壜の中の手記 』 ジェラルド・カーシュ
 腕のいい時計職人が、国王から自身の身代わりの人形作りを依頼されるが・・・。それほど珍しい話じゃないんだけど、語り口というかいい味なんだよね。

・「ぬいとり」  『太陽の黄金の林檎 』 レイ・ブラッドベリ
 こちらは道具もの。針、糸といったありふれた道具による刺繍のシーンは息をのむほどに美しく、それらがラストに収束していく、あまりに見事なわずか7Pの名品。

・「テーブル」(ウィリアム・トレヴァー) 『棄ててきた女』 若島正
 最後は普通小説で。家具商が買ったテーブルに関するひと悶着。驚くようなことが起こるわけではないのだが、静かな余韻が素晴らしい。