『年刊SF傑作選 3』 ジュディス・メリル編

 3も読了。お馴染みの作家が増えてきた。(以下いつものように○が特に面白かったもの)

「不安全金庫」○ジェラルド・カーシュ 主人公はある特定の条件のもとでとんでもない破壊力をもつという物質の製造に成功する。奇抜なアイディアとストーリー、さすがカーシュ。
「恐怖の七日間」○ R・A・ラファティ 再読だがやっぱこの人の書く子供は怖いなあ。
玩具店」 ハリイ・ハリスン 新しい模型飛行船を街頭販売する男。うーん、平凡なショートショート
「木偶」○ ジョン・ブラナー 夢を見ることを妨げる実験の被験者となったスターリング。アイディアは面白い一方ちょっと首をかしげる点もあるが、ホラーっぽい雰囲気とはあっていて面白く仕上がっている。
「電気と仲よくした男」○ フリッツ・ライバー 電気のささやきが聞こえるという変わった老人レバレットに貸家をあっせんすることになったスコット。これぞ電気仕掛けのホラー。ライバーって巧いなあ。集中ベスト。
「生贄の王」ポール・アンダースン 兵士ディーアスはミサイルにやられ宇宙を漂流する。やがて敵に捕らえられて・・・。長くはないのにテンポの良い本格アクションになっているのはなかなか。敵の将軍をめぐるアイディアも時代を考えると新しい。
「クリスマスの反乱」 ジェイムズ・ホワイト リチャードたちは特殊な能力を持つ子供たち。サンタクロースの謎を追ううちにロケットを見つけるが。よく出来てるんだが、ラファティと並ぶと毒気の薄さで分が悪い。
「世にも稀れなる趣向の奇跡」○ レイ・ブラッドベリ ボブとウィルは砂漠地帯で不思議な景色を目にする。まあこういうのはストーリーだとかアイディアだとかを超えた世界だね。ブラッドベリにしか書けないだろう。
「あのころ」○ ウィリアム・F・ノーラン 蝶のハミングが聞こえてしまった<わたし>は精神科医への道を急ぐ。こういう変なのは大歓迎。
「狂気の人たち」○ J・G・バラード 『時間都市』で読んでいたから再読なんだけど、実は傑作なんだな。精神医療が一切認められなくなったディストピアというアイディアが凄いし、オチも見事。散見されるバラードらしいイメージも読みどころ。
「アンジェラのサチュロス」ブライアン・クリーヴ アンジェラはサチュロスに恋をする。ウェルメイドなファンタジー
「人形芝居」 フレドリック・ブラウン チェリービルにあらわれた恐ろしいものとは。ちょっと古めかしい感じ。
「地球人、ゴー・ホーム!」 マック・レナルズ 火星人に関するレポート形式のコミカルな作品。
「分科委員会」 ゼナ・ヘンダースン 戦争中の宇宙人リンジェニと地球人の停戦交渉が難航する中、平和を願うセレーナは。再読。生真面目(だと思う)な著者らしい作品である。

 全体に個性的な作品が目立ち、これも楽しめた。