‘ドリームガールズ’DVD視聴

 NHK−BSでエディ・マーフィのインタビューをやっていて、劇場で見逃した‘ドリームガールズ’を急に観たくなったので(それにしてもこのアクターズ・スタジオ・インタビュー、有名俳優一人にじっくりと時間をかけてなかなか面白いのだが、司会のジェームズ・リプトンの質問内容や間が日本のインタビュー番組と随分違ってアメリカ的というかそういうところばかりに目がいってしまう)。
 で、その‘ドリームガールズ’。
 内容はご存知の方も多いだろうが、舞台は1960年ごろ夢見る売れないコーラスグループの三人娘がチャンスをつかみかける中、成功を目指してリードヴォーカルの交代が命じられるという話。
 ど真ん中正攻法なミュージカル映画で逆にびっくりしたくらい。そんな古風ともいえるスタイルを巧くショーアップしているのが時代考証を踏まえた完成度の高い音楽と60〜70年代(風だけど実はほどよく現代風に改変された)ファッションや舞台(やらアルバムジャケットやら番組ロゴやら)。話としてちょっと甘めだし、いろんなソウル/R&B音楽の流れの多くをジミー(エディ・マーフィ)に担わせ過ぎて彼の個性が逆にぼやけている(どんなミュージシャンか印象が定まらない)点は気になるが、整合性よりこの時代の音楽を聴かせて見せる映画なのだからこれでいいのだろう。エディ・マーフィー自身は本職のミュージシャンとはいえないのに芸達者ぶりで見せてしまうのがらしいし。劇中使われた楽曲のその時代っぽさは当然素晴らしいし、ジミーのファンキーな楽曲がパクられて白人良家子女向けふぬけポップスに変わるところとか、再起をかけたエフィー(ジェニファー・ハドソン)のシンガーソングライター風のバラードがあっさりメジャー向けの品のないディスコアレンジに変えられてしまうところなど音楽スタッフの芸の細かさには脱帽。
 事前にはよく知らなかったのだが(やっぱり)実話を元にしているようだ(‘ドリームガールズ’は元々舞台で演じられていたので、このエピソードは以前からよく知られたものなのだろう)。ディーナ(ビヨンセ)がダイアナ・ロスというわけ。エフィーのモデルになったフローレンス・バラードは32歳で不遇の死を遂げたというから、いかにも芸能界らしいシビアな話である。さらにビヨンセ自身がデスティニーズ・チャイルドでメンバー脱退(追い出し?)を経験しているのも意味深だし、ジェニファー・ハドソン出世作になっていることも合わせて色んな意味で話題豊富な作品である。
 さてちょっとフローレンスが可哀想なので一曲。この辺を読むと、なかなか泣ける(敗者のうらみからの発言も含まれているのだろうが)。フローレンスのCDも出ている。→The Supreme