『ディスコ探偵水曜日』 舞城王太郎

 ミステリチャンネルの‘闘うベストテン2008’をみた、ということで『ディスコ探偵水曜日』に触れたので、いったいどんな作品かなーと思って手に取ったが運のつき。『煙か土か食い物』しか読んでいない自分には相当な難物であった。しかし何はともあれとんでもない問題作なのは間違いない。当方の乏しい読書経験ではあまり似た作品は思いつかない。
  迷子捜し探偵のディスコ・ウェンズデイは解決された誘拐事件の少女梢の面倒をみることになる。さてその6歳の梢が時々17歳になったりして悲劇的な運命が暗示され、さらに他の少女が乗り移ったりする。その梢を救うには福井県にある奇妙な形をした屋敷<パインハウス>のミステリー作家殺人事件解決しなければいけないということになってディスコがそこへ向かう。沢山の名探偵が揃った<パインハウス>でまたまた起こる殺人事件。次々に明かされては覆される事件の真相!やがてディスコはこの宇宙の謎と対峙することになるのだ!
 ・・・・・・いやホントに説明のしようが無い話とはこのこと。謎解きには独創的なSFアイディアが満載でこの作品はSFでもある。その一方
で、単なるめゃくちゃならいい(?)のだが、事件を巡る伏線が細かく徹底的に回収されていくのだから参った。つまり本格ミステリとしての堅牢な世界構築という求心的な力が強力に働くのと同じぐらいの力で世界観を破壊するような数々の爆発的な奇想SFアイディアが遠心力として働いていて、熱っぽい語りの上に危ういバランスで今にも破れそうなギリギリのテンションで作品が存在している感じである。『九十九十九』などを読んでいないのでなんともいえないところもある。それでもアイディアの整合性などはさておいても、ストーリーに比べて謎解きやSFアイディアの比重がやたらと大きく、普通に考えればバランスは崩れており、いわゆる名作とか傑作とはとても言えず、歪んだ作品ではあるだろう。ともかく冒険心溢れるユニークな大作で、ミステリファンやSFファンの話題となるのは当然だ。