『名探偵 木更津悠也』 麻耶雄嵩

 久々麻耶雄嵩。白幽霊が登場する場で、様々な殺人事件が起こる。それを名探偵・木更津悠也と助手役の香月実朝が解決する4編の連作ミステリ。

「白幽霊」 白幽霊の出るという路地の近くにある、資産家の洋館で主が殺される。入り組んだ家族関係の中、いったい真犯人は。
「禁区」 白幽霊に興味を抱いた高校生たち。物見遊山で出かけたあと、その一人が校内で殺された。果たして幽霊の仕業なのか?
「交換殺人」 妻と大喧嘩をして泥酔した男に、その妻を殺す代わりにある人物を殺してほしいと交換殺人話が持ちかけられる。朝新聞をみるとその人物が殺されていた!このままでは妻が殺されてしまうと男は木更津悠也に依頼をする。(幽霊もいちおう出てくる)
「時間外返却」 鉄道ビデオに写った幽霊。その場所を特定して好奇心で集ったオカルト好きたちが死体を発見する。身許は一人暮らしの女子大生と判明。殺人後間もなく、その血痕がついたレンタルビデオを返却した犯人の意図とは。

 どれも意外な犯人でそこそこ楽しめる、どちらかというと正攻法な連作だなと読後思った。いやだが待てよ、なんか臭うな・・・と思ったら、なーるほどまたけったいな試みをしているのね。相変わらず鈍いから解説を読んでようやく分かったよ。ということで、解説を先に読んじゃ絶対駄目よ!そうするとどうも相当ヒドい真相もあり得そうな・・・。しかしまあ何にしてもいろんな試みをするもんだなこのお方。この実験精神にはホント感服。志の高い文学実験というより、いくぶんアホらしさと大いなる無駄な努力感が漂うところがなんともいい感じなのである。そしてその底に黒光りする底意地の悪さもまた天晴れ。