謹賀新年、そして昨年最後に観た映画‘アンダーグラウンド’

 昨年は大変な年でしたが、今年は皆様にとって明るい年となるよう祈っております。
当ブログ新しい目標もないまま更新ペースは遅いまま(さらに減速の予感も?)ですが、マイペースで続いていく予定です。よろしくお願いいたします。

 さて昨年最後に観たのは‘アンダーグラウンド’。これアンコール上映なのね。いつも音楽・映画の楽しくセンスのいいレビューが光るフモさんのブログ<メモリの藻屑、記憶領域のゴミ>のベスト10から知って、チャンスがあったので観てみた。いやーこれは凄い映画だった。
 第二次世界大戦ナチス・ドイツ占領下のセルビア。詩人のマルコと電気工事師のクロは明るい不良レジスタンスのコンビ。二人はちょいと犯罪に手をそめつつ飲んだくれて乱痴気騒ぎを明け暮れながら抵抗運動を繰り広げている。ナチス将校フランツに気に入られた女優のナタリアに、妻がある身の癖につきあっていたクロは勝手にも嫉妬を覚え一計を案じる。
 基本はコメディ。三人のコミカルでからっとした演技が楽しく、また常に彼らの周りにひかえているブラスバンドが奏でるけたたましいジプシー音楽がガンガン流れテンポよくのせられていく。3時間近くやや長いがそんなことは微塵にも感じさせない。3人以外の登場人物も巧みに配置されている。上記の三角関係が中盤にあまりに信じられない展開を引き起こすことになるので、いったいどこに着地するのだろう実は幻想系の話なのか?と疑ってしまうくらいなのだが、実はそれも伏線で一気に反転して強い印象を残す見事なラストへとなだれ込むのである。そこで最後にこの映画で描かれているのは戯画化された現実の歴史、いやむしろ戯画化することによってしか描くことが出来ない国も人も翻弄された重い歴史が現実にあったのだと気づかされる。そしてそこにあるのはせわしなく喜び怒り泣き飲み歌い踊る人間たちなのだということにいいようのない切ない気持ちにおそわれるのだ。
 シアターN渋谷で1月20日までやっているようです。自分と同じように、予備知識は最小限にして観て欲しい。びっくりするよ。